サイト内検索:

「知らなきゃ損する!面白法律講座」第596号

                      http://www.hou-nattoku.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2011年10月24日                        第596号
───────────────────────────────────
 発行部数: 20,063部(まぐまぐ 14,564部、melma! 5,499部)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 目 次
───────────────────────────────────

  □ なっとく! 法律相談 第584回
    「突然辞めたアルバイト店員に損害賠償請求できる?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1071.php

  □ 法律クイズ 第270回 【問題】
    「子供宛ての手紙を勝手に見たら犯罪?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0555.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第八十四回 「被害者の承諾と結果の認識」

  □ 法律用語 「下請法」

  □ 法律クイズ 第270回 【解答】



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ なっとく!法律相談 第584回
───────────────────────────────────

 「突然辞めたアルバイト店員に損害賠償請求できる?」

 □相談□

  当方小さい(客数40名)居酒屋をやっております。 先日、当店で長期に
 わたり(1年以上)働き続けているアルバイト1名が、メール1通で『辞めま
 す』とだけ送ってきて退職しました。そのため人手不足となり店がうまく
 回らず、お客様に多大な迷惑をおかけしました。怒って帰られるお客様も
 おられました。
  辞めたアルバイト店員は、1年以上も働いているので、一人のアルバイト
 が居なくなることで店が回せなくなるのは、十分に理解しているはずです。
 明確な被害額は分かりかねますが、何らかの損害賠償請求をする事は可能
 でしょうか。

                          (30代:男性)


 □回答□

  労働法規には労働者による労働契約の解約についての規定はありません。
 そこで、今回の様な場合には雇用契約の原則を規定している民法が適用さ
 れることになります。
  民法の規定によると期間の定めのない雇用契約の場合、特に理由がなく
 てもやめたいときにその旨を申し入れ、その2週間後に辞めることができま
 す(民法627条1項)
  アルバイトは期間の定めのない雇用契約にあたるので、民法627条1項が
 適用されると考えられます。
  今回の場合、アルバイト店員はメールで辞める旨を相談者に告げその後
 出勤しなかったとのことですので、相談者と当該アルバイト店員との間の
 雇用契約はその申し入れから2週間の間は存続していたことになります。つ
 まり、メールが来てから2週間は有効な雇用契約が存続しているので、その
 期間当該アルバイト店員には労働する義務があったことになります。それ
 にもかかわらず、出勤してこなかったのですから、当該アルバイト店員は
 雇用契約による労働義務を果たしていないことになります。
  したがって、相談者はこの2週間の間に彼が労働義務を違法に提供しな
 かったことによって生じた損害を請求することができます。
  ただし、損害額の算定及び労働義務の不履行と損害との因果関係の立証
 は困難であると考えられます。

  また、相談者がアルバイト店員に対して損害賠償請求できるとしても、
 この損害賠償と相談者がアルバイトに支払う(未払い分の)賃金とは相殺
 することはできません(関西精機事件 最判昭和31年11月2日)。
 
  [関連情報]
  ・賃金「全額払いの原則」
   http://www.hou-nattoku.com/consult/273.php



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第270回 【問題】
───────────────────────────────────

 「子供宛ての手紙を勝手に見たら犯罪?」

  Aさんは、最近子供であるB子が再三の注意にもかかわらず深夜徘徊を繰
 り返し、学校も休みがちなことから、B子のことがひどく心配でした。そん
 なある日、AさんはB子さん宛てにきた手紙をB子さんに無断で開封してしま
 いました。
  Aさんのこの行為は信書開封罪(刑法133条)にあたるでしょうか。

 1. あたる
 2. あたらない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 裁判員のための一口判例解説
───────────────────────────────────

  第八十四回 「被害者の承諾と結果の認識」
        ~大審院昭和8年4月19日判決

  ある人に自殺行為を促したところ、それを承諾し、結果的に死んでし
 まったという場合、これは殺人だと思いますか?それとも自殺に関与した
 だけだと思いますか?
  
  自殺することに本人の同意があれば、「被害者の承諾」があったのだか
 ら基本的には自殺だとして自殺関与罪(202条)になります。
  一方、「被害者の承諾」がない場合は、死にたくない人を死なせるので
 すから殺人罪(199条)です。
  
  本件では、「被害者の承諾」が、「自殺行為」の内容に対する承諾で足
 るのか、その先にある「自分の死」を正確に予見・認識したうえでの承諾
 までを指すのかが争われました。
  
  被告人Xは、失職して経済的に苦しかった隣人のAに対し、家計の補助を
 するなど、昵懇の間柄でした。
  
  ある日Aは、Xに、自殺を装って保険金を詐取できないかと相談します。
  Xは、不眠症薬を多量摂取して2・3日仮死状態に陥った者がいたという新
 聞記事を思い出し、「ある薬剤を服用して首を吊り、仮死状態になったあ
 と、検視を経て、さらにある薬剤を服用すれば生き返るはずだ」とAに説き
 ました。
  
  その後Xは、自分のアイデアは荒唐無稽だとすぐに悟りましたが、Aが愚
 鈍でXのことを厚く信頼していることを好都合と考え、あらかじめAに生命
 保険をかけ、自殺のように見せかけて保険金を騙し取ろうと企てました。
  そこで、Xが、Aに生命保険をかけたうえで今後の生活の補助を断ったと
 ころ、Aは上記計画を実行しようと申し出て薬剤を求めます。
  XはAに薬剤を渡し、「首を吊っても仮死状態のままで、Xが他の薬剤を使
 用すれば蘇生する」とAに誤信させたため、Aは自ら首を吊って死亡しまし
 た。
  
  ちなみに、A死亡後、Xは保険会社に保険金を請求しましたが、支払いを
 拒否されたため詐欺は成功しませんでした。
  
  原審は、Xに殺人罪(199条)と詐欺未遂罪(250条)を成立させました。
  それに対し弁護側は、自殺に対するAの承諾があったとして自殺関与罪を
 主張し、上告しました。
  
  大審院は、上告を棄却。
  AはXの虚言によって認識を誤り、一時仮死状態に陥っても再び蘇生でき
 るものと信じて、自ら首を吊って死亡したのだから、Aに自分が死ぬ認識は
 なく、したがって自殺の承諾はなかったとしました。
  それゆえXはAを殺害したというべきで、原審判決は相当であると判断し
 たのです。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律用語
───────────────────────────────────

 法律用語 「下請法」


  産業に不可欠な存在でありながら、経済悪化のしわ寄せを受けやすい下
 請業者。
  そんな下請業者の利益を守るため、下請取引の公正化を図るのが下請法
 (下請代金支払遅延等防止法)です。
  
  下請法は、資本金規模の大きい「親」事業者と、小さい「下請」事業者
 が、本法に定められた取引(製造・修理やサービス、プログラム制作等を
 提供するなど)を行う場合に適用されます(資本金額や取引内容の詳細は
 2条1項~8項)。
  
  発注側で立場の強い親事業者には、その権利を濫用して後々無謀な要求
 をしないように、発注時に、注文内容や受領期日、支払等を具体的に記し
 た書面を下請業者に渡すよう義務付けられています(3条)。
  また、契約による給付内容や下請代金額等を記載した書類を作成したう
 え、これを2年間保存する義務も負います(5条)。
  上記2点の義務に背くと、50万円以下の罰金です(10条)。
  
  加えて、下請への代金支払が遅れた場合は、「物品等の受領日から61日
 目~実際の支払日」の期間につき、年率14.6%の遅延利息も生じます(4条の
 2)。
  
  さらに、親事業者には、11項目の禁止行為も定められています(4条)。
  
  (1) 注文したものの受領拒否(1項1号)

  (2) 下請代金の支払遅延(1項2号)

  (3) 不当な下請代金の減額(1項3号)

  (4) 不当な返品(1項4号)

  (5) 買いたたき(下請代金を一般的な価格よりも著しく低く設定する
     こと。1項5号)

  (6) 購入・利用強制(正当な理由なく、下請業者に特定の物やサービ
     スの購入・利用を強制すること。1項6号)

  (7) 報復措置(下請業者が公正取引委員会などにリークしたことで、
     取引停止等の不利益な扱いをすること。1項7号)

  (8) 有償支給原材料等の対価の早期決済(下請業者の生産活動に必要
     な材料を有償で支給する場合に、下請代金を支払う前に材料費を
     請求するなど。2項1号)

  (9) 割引困難な手形の交付(一般の金融機関では換金が困難な手形で
     支払うこと。2項2号)

  (10)不当な金銭や労務の要求(2項3号)

  (11)不当な給付内容の変更・やり直し(2項4号)
  
 こうした禁止行為は、下請業者の了承があろうと、親事業者に違法性の認
 識がなかろうと、行った時点で下請法違反とみなされ、公正取引員会から
 勧告が出されます(7条)。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第270回 【解答】
───────────────────────────────────

 「子供宛ての手紙を勝手に見たら犯罪?」

 □解答□

 2. あたらない

  正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、1年以下の懲役
 または20万円以下の罰金が科されます(刑法133条、信書開封罪)。
  犯罪の捜査のために必須で相当の要件の存在する場合や、親が子の手紙
 を読む行為などは、監督権の範囲内なら可罰性を欠き、無罪となり処罰さ
 れません。
  本問でも、Aさんはわが子であるB子の素行不良を正す目的を持ってB子さ
 ん宛ての手紙を開封したといえるので、監護権の範囲内での行為として処
 罰されません。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 「弁護士・法律事務所データベース」のご案内
───────────────────────────────────

 「弁護士・法律事務所データベース」は全国の弁護士・法律事務所を網羅
 したデータベースサイトです。
 
 http://www.hou-nattoku.com/lawyers/

  名前や性別・事務所所在地・得意分野など、様々な条件を設定して弁護
 士や法律事務所を検索することが可能です。弁護士選びの参考にぜひお役
 立て下さい!
 
 弁護士の皆様の情報登録もお待ちしております。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 法、納得!どっとこむ、モバイルサイトでも情報配信中!
───────────────────────────────────

 「法、納得!どっとこむ」でおなじみの「もし裁判員に選ばれたら?」
 や「裁判員のための刑法入門」を始め、法律相談・法律クイズを携帯サイト
 で配信中!外出先や通勤途中でも「法律」が学べます。

    ⇒ 『法律Q&A』http://homu.tv/q?m=lifrml 
    ⇒  ※携帯電話からのみご利用いただけます。  
       ※3キャリア対応(DoCoMo・au・SoftBank) 



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お知らせ
───────────────────────────────────

 ★皆様のメルマガに対するご意見をお聞かせください。
  どんな些細なことでも結構です。
  また、取り上げて欲しい話題・ご質問などもお待ちしております。
  専用フォームで簡単に送信できます  ▼Click!!
  https://www.hou-nattoku.com/opinion/

 ★メルマガの相互紹介を募集しています。
  ご希望の方は、お問合わせフォームよりご連絡下さい。
  https://www.hou-nattoku.com/opinion/



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:NPO法人 リーガルセキュリティ倶楽部
監 修:弁護士 密 克行、弁護士 浅井 健太、弁護士 中西 啓
───────────────────────────────────
法律相談の応募: http://www.hou-nattoku.com/ask/
登 録 ・ 解 除: http://www.hou-nattoku.com/about/magazine.php
バックナンバー: http://www.hou-nattoku.com/mailmag/
ご意見・ご感想: https://www.hou-nattoku.com/opinion/
───────────────────────────────────
関連サイト
リーガルフロンティア21: http://www.lifr21.com/
パラリーガルWEB:http://www.paralegal-web.jp/
法律事務所求人ナビ:http://xn--3kq5dn1lntqcjdhtuj3a.jp/
知って納得!離婚どっとこむ:http://www.nattoku-rikon.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




        

 

ページトップへ