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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第643号

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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年11月 5日                        第643号
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 発行部数: 19,320部(まぐまぐ 13,865部、melma! 5,455部)
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■ 目 次
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  □ 著作権の最新事情 第6回
    「私的複製3~ネットへの写真等掲載や、いわゆる「自炊」は違法?~」

  □ 携帯をめぐる法律問題 第11回
    「携帯代とブラックリスト1」

  □ なっとく! 法律相談 第631回
    「日給月給制だと残業代がつかない?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1179.php

  □ 法律クイズ 第317回 【問題】
    「将来の債権を譲渡することは出来る?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0663.php

  □ 民事判例解説 第22回
    「体罰と教育的指導の境目は?」

  □ 法律クイズ 第317回 【解答】


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■ 著作権の最新事情
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 第6回「私的複製3~ネットへの写真等掲載や、いわゆる「自炊」は違法?~」

  前回に引き続き今回も、日常の行為が、権利者に無断で利用しても例外
 的に著作権侵害とならない「私的複製(著作権法30条1項)」の範囲内かを
 考えます。
 判断基準は、その行為が、個人・家庭内など非常に限定的であり、「私的
 使用」だといえるかどうか。
 いえない場合はアウト(著作権侵害)、いえる場合はセーフ(私的複製)
 です。

 さあ、みてみましょう。

 ■ウェブサイトやブログに記事や写真を載せるのは?
  →アウト

  ウェブサイトやブログというのは、大勢の人がアクセスできる場であり、
 個人や家庭内など限られた範囲とは到底いえません。
  したがって、そこに第三者が著作権を有する記事や写真を勝手に載せる
 行為は、著作権法上データの「複製」であり、たとえ個人的な用途であっ
 ても私的使用とは認められないのです。
 「どうせ私のブログは特定の友達4、5人しか見ていない」と思っていても、
 ネット上は公の場と認識し、掲載記事等には十分気を配りましょう。
  
 ■いわゆる「自炊」は?
  →自分や家族など限られた範囲で共有する目的ならばセーフ
  
 「自炊」とは、自分の所有する書籍や雑誌を電子書籍として利用するため、
 スキャナ等でデジタルデータ化する行為を指した俗語です(これも著作権
 法上の複製)。
 iPad、Kindleなどのタブレット端末が普及したことで、電子書籍の需要が
 一気に高まり、一時期随分と話題になりましたね。
  
  自分のためや、家族・数人の親しい友人と共有するために行う「自炊」は、
 私的複製として許されます。
 他人からアクセスできないような自宅サーバーであれば、このデータをアッ
 プロードして家族で共有することも可能です。
  
 ただし、上記のようなごく限られた範囲での共有を逸脱した場合、たとえば

 ・知人にデータを渡した
 ・企業内で利用するためにスキャンした

 などの場合は「私的複製」にはならずアウトですのでご注意ください。
  
 ■スキャン代行は?
  →権利者に複製の許可を得ていないならアウト
  
 「私的複製1」の記事でも紹介しましたが、私的複製が認められる条件の
 中に「使用する本人がコピーする」というものがあります(著作権法30条
 1項)。
 自炊代行サービスは利用者ではなく業者がコピーするため、私的複製には
 あたらず、したがって複製時には著作権の原則通り権利者の許可が必要で
 す。

  従来は出版社に複製権等の権利がなく、違法データに対する差し止め請
 求や損害賠償請求などの対抗措置は作家個人に任せられていたため、違法
 データの拡大に歯止めをかけるのは難しい状態でした。
 しかし、2012年4月に作家、出版社、国会議員らが勉強会を開き、出版社が
 編集・発行した書籍・雑誌(電子のものを含む)に関して、複製権等を取
 得するという著作権法の改正試案をまとめています。
 これが実現すれば、作家個人ではなく出版社が違法データに対して差し止
 め請求や損害賠償請求などを行えるため、現在よりも代行サービスへの圧
 力が強まる見込みです。



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■ 携帯をめぐる法律問題
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 第11回「携帯代とブラックリスト1」

  ブラックリストといえば、金融会社からの借金を返せないとか、クレジッ
 トカードの支払が滞っているとか、「長期の借金滞納を起こしたときに載
 せられるもの」というイメージが強いですよね。
 しかし、「借金していない自分には縁のない話だ」と安心するのはまだ早
 いですよ。

 あなたは、携帯電話本体を割賦で購入していませんか?
  
 この場合の本体代は毎月の使用料と一緒に支払ううえに、継続利用期間な
 どの条件を満たせば割引されるため、本体代と使用料等の線引きが曖昧に
 なりやすく、顧客の大半は携帯でローンを組んでいる、借金をしていると
 いう意識が低い傾向にあります。
 しかし実態はローンですから、顧客の契約や支払状況等の事実は、その人
 の経済的信用を表す情報として逐一CIC(信用情報機関)に登録されること
 になるのです。
  
 では、CICは携帯利用者のどのような情報を保有しているのでしょうか?
 具体的には以下の通りです。
  
 (1)本人識別情報
  →氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先、公的資料番号など

 (2)契約内容
  →商品名、契約日と契約終了予定日、契約の種類・額、支払回数など

 (3)支払状況
  →報告日、残債額、請求額、入金履歴、異動(延滞・保証履行・破産)
   の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況など

 (4)割賦販売法対象商品の支払状況
  →割賦残債額、年間請求予定額、遅延有無など

  通話料金を滞納しただけのつもりでも、そこに携帯電話本体の分割料金
 が混じっていれば、たちまち上記の信用情報に反映され、いわゆる「ブ
 ラックリスト」入りしてしまうというわけです。
 この情報は、契約解除後も5年間保有され、CIC会員の間で共有されます。
 ただし、5年というのは完済後の話であって、完済していない場合は基本的
 に何年たっても記録は抹消されません。
  
  また、平成11年4月以降は、携帯・PHS会社間で料金不払い情報の交換が
 行われています。情報共有の期間は、契約解除後5年以内とされていますが
 、自社利用者の滞納情報の保有期間は明らかにされておらず、再契約時に
 契約条件が不利になる可能性があります。
  
 次回は、携帯代とブラックリストの現状について説明します。





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■ なっとく!法律相談 第631回
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 「日給月給制だと残業代がつかない?」

 □相談□

  休日出勤手当と時間外労働の手当てが勤めている会社にはなく上司に聞
 いてみたところ、日給月給者には残業手当等は付かないと言われました。
 本当に日給月給者にはそう言った手当ては付かないものなのでしょうか?

                          (10代:男性)


 □回答□

  一般的に、日給月給制とは、1日を計算単位として給料が定められ、そ
 の支払を毎月1回まとめて支払う制度のことをいいます。この給与制度で
 は、遅刻、早退、欠勤などをした場合は、その会社の規定に基づき給与か
 ら相当額が控除されます。なお、ノーワークノーペイの原則から、このよ
 うな控除は給与不払いとはなりません。
  この他、給与制度としては、完全月給制、月給日給制、日給制、時給制、
 年俸制等があります。これらの内どの給与制度を採用しても労働基準法上
 の労働時間や割増賃金等の規制の対象となります。
  すなわち、使用者が労働者に対して指揮権を持ち拘束できる時間(労働
 時間)は、1日最大8時間とされています(労基法32条2項)。また、1週
 で最大40時間までとされています(同32条1項)。休日についても、少
 なくとも毎週1回与えなければならないとされています(同35条1項)。
  もっとも、(1)労働基準法第36条第1項で定められている通り労使間で
 協定(三六協定)を締結して行政官庁に届け出るか、(2)労働基準法第37
 条第1項で定められている通りに使用者が労働者に対して割増賃金(残業
 代・時間外労働手当)を支払うことによって、上記時間を超えて労働者を
 拘束することが出来ます。
  すなわち、(1)・(2)の条件を満たすことなく残業や休日出勤をさせ
 た場合には労基法違反となります。なお、当該違反者は6箇月以下の懲役ま
 たは30万円以下の罰金に処せられることになります(労基法119条)。
  したがって、日給月給制だから残業代がつかないということはありませ
 んし、あらかじめ定められている休日に出勤したのであれば、休日手当を
 支払わなければなりません。相談者の会社は違法行為をしているおそれが
 ありますので、一度、労働基準監督署に相談された方が良いでしょう。


  [関連情報]
  ・給与が年俸制の場合、残業代は請求できない?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/773.php



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■ 法律クイズ 第317回 【問題】
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 「将来の債権を譲渡することは出来る?」

  医師であるXさんは、借金返済のために将来発生する診療債権を貸主に譲
 渡しようと考えました。このように未だこの世に存在していない債権を他
 人に譲渡することはできるでしょうか。

 1. できる
 2. できない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 民事判例解説
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  第22回「体罰と教育的指導の境目は?」
     ~最高裁平成21年4月28日判決~

  児童を指導するうえで、どう叱るかというのは大変難しい問題です。
 今回紹介する事案では、教員が児童に対して行った叱り方が、体罰か、そ
 れとも教育的指導かが問題となりました。
  
 舞台はB市立小学校の休み時間。
 3年3組の担任を務める教員A(身長167cm)は、廊下でだだをこねる3年生男
 子をしゃがんでなだめていました。
  
 廊下を通りかかったX(同校2年生男子、身長約130cm)は、Aと面識があり
 ませんでしたが、Aの背中に覆いかぶさるようにして肩をもみます。
 AはXに離れるように言いましたが、Xが肩をもむのをやめなかったので、上
 半身をひねってXを振りほどきました。
  
  さらにXは、そこを通りかかった6年生の女子数人を、同級生の男子1人と
 ともに、じゃれつくように蹴り始めました。
 Aはこれも制止し、「このようなことをしてはいけない」とXに注意しまし
 た。
  
  その後Xは、職員室へ向かうAのおしり付近を後ろから2回蹴って逃げ出し
 ます。
  立腹したAはXを追いかけて捕まえ、Xの胸元の洋服を右手で掴んで壁に押
 し当て、大声で「もう、すんなよ。」と叱りました。
  
  Xは、その日の夜10時頃、自宅で大声で泣き始め、母親に「眼鏡の先生か
 ら暴力をされた」と訴えました。
 Xはその後も夜中に泣き叫び、食欲が低下し、通学にも支障をきたして通院
 治療を受けるようになりました。
 しかしこれらの症状は一過性のもので、徐々に回復し、やがてXは学校でも
 家でも元気に生活を送れるようになりました。
  
  この一件について、Xは、教員Aから体罰を受けたと主張して、Y(旧B市)
 を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしました(国家賠償法1条1項)。
 1審・2審とも、教員Aの行為を体罰(学校教育法11条ただし書)と判断し、
 Xへの損害賠償を命じました。
 ちなみに、原審判断の根拠は、

 (1)胸元をつかむという行為は、けんか闘争の際にしばしば見られる不当
    な行為。
    Xを捕まえるためなら、手をつかむなど、より穏当な方法も可能だっ
    た。

 (2)Xの年齢、XとAの身長差、両者にそれまで面識がなかったことを考え
    ると、Xの被った恐怖心は相当なものと推認される。
    Aの行為は、社会通念に照らし教育的指導の範囲を逸脱するものであ
    る。

 というものです。
  
 これを不服としたYが上告したところ、最高裁は、1・2審の判断を覆しまし
 た。
  
 Aの行為は、児童の身体に対する有形力の行使ではあるものの、他人を蹴る
 というXの一連の悪ふざけについて、今後はそのような悪ふざけをしないよ
 うXを指導するために行われたものだとし、これは悪ふざけの罰としてXに
 肉体的苦痛を与えるために行われたものではないことが明らかだと確認し
 ました。
  
  確かに、Aも、自分自身も悪ふざけの対象にされ立腹して本件行為を行っ
 ており、やや穏当を欠くところがありました。
 しかし、Aの行為は、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児
 童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、
 結局は体罰に該当しないと判断したのです。
 したがって、Aの行為に違法性はなく、2審のYの敗訴部分を棄却してXの請
 求を退けました。



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■ 法律クイズ 第317回 【解答】
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 「将来の債権を譲渡することは出来る?」

 □解答□
 1. できる

  現在発生していない将来の債権を譲渡することができるかに関して、判
 例は、医師が将来の診療債権を譲渡した事案に関して、「譲渡の目的であ
 る債権が特定」されれば、将来の債権の譲渡も有効と考えています(最判
 平成11年1月29日参照)。
 本問でも債権が特定されていれば将来債権も譲渡が可能ということになり
 ます。



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