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貸し渋り・貸し剥がしに備えるために (1)

 最近、資金調達支援のコンサルティングをしていますと、「毎年決まって借りていた季節資金を、この前銀行に申し込んだら、今回は貸してくれなかった。」だとか、「銀行から、貸出金の金利を上げてくださいと要請があったが、断ると、全額返済してください。と、強硬に言われた。」だとか、「新規借り入れを申し込んだら、『一旦、全額返済してください。その後に新規貸出金の申し込み手続きを行います。』と、言われたので何とかお金をかき集めて今までの貸出金を返済したら、その後、融資を実行してもらえなかった。」といった、「貸し渋り」や「貸し剥がし」に関わるご相談がかなり増えてきているのを実感します。

 お話を伺った中には、「それは、貸し渋りをうけても仕方がないなあ。」という先もあれば、「なぜ、そこまでひどい仕打ちをするのだろうか。」と感じるような理不尽な扱いを受けているケースもあります。

 ただ、それらの方々に共通して感じられるのは、全体的に「金融機関とのつきあい方をうまくされていないな。」ということでした。

 ちょっとしたコツを知っているだけで、「貸し渋り」を回避できたり、「貸し剥がし」に遭わずに済んだりすることが出来るのに、それを知らないが故に、そのような扱いを受けてしまうことがかなりあるように思います。

 そんな目に遭わない為にも、この場を借りまして、皆様に「金融機関との交渉のコツ」をお伝えしていこうと思います。

1.今の金融機関は昔の金融機関とは違う!

 金融機関は最近、積極的な店舗統合やリストラによる人員削減を行ってきました。それにより、貸付係が担当する一人当たりの顧客数が増加しました。その上、以前なら係長・課長・副支店長・支店長と貸付業務に関わる上司が何人もいましたが、今では、課長・支店長のみといったように少人数で貸付先を担当するようになっています。

 それだけでなく、今まで行っていなかった、取引先の信用格付作業、定期的に行う格付けの見直し作業、1年に2回程度行う自己査定等の膨大な事務作業がが加わってきました。

 また、この不況の進展で不良債権も増加しているため、その処理というややこしくかつ時間のかかる作業も大幅に増加しています。

 したがって、取引先に対する業務を合理化する必要に迫られ、余計な時間をとられない事務作業をたんたんとこなしていくというスタンスに変わってきました。

 また、以前は積極的に行っていた取引先の経営状況の把握や資金繰りに対する目配りの余裕はまったくと言ってもよいぐらいなくなってまいりました。一人の窓口担当者がお客様の全てのニーズにお答えすることは、ほぼ不可能な状態となっています。

 貸付担当者と言葉を交わすことも次第になくなり、お互いなかなか顔も覚えられず人間関係も希薄になっています。

 その結果、金融機関側のお客様情報も不足しますので、新たに融資を行うときの判断を、決算書や担保力に頼らざるを得ない状況となっているのです。

 そして、それは、マニュアル的な融資しか行えない貸付係やお客様への気配りがない説明の十分行えない貸付係が増える要因となっています。

 このように以前とは全く変わってしまった、貸付係をとりまく環境を認識していただいた上で、気配りをしてもらえるような金融機関との関係を構築し保持し続ける必要があると思われます。

 言い換えれば、今まで金融機関が積極的に収集しようとしていた企業の情報を今後は企業が積極的に金融機関に知ってもらうためにアピールする必要があるということです。そうでないと企業の決算書の情報や担保力以外にある付加価値的な強みを考慮してもらうことができないからです。

 金融機関と距離が出来てきたなと思われるときにこそ、自社の強みや状況等、貸付担当者に伝え(このときは必ず口頭と同時に文書で伝えるようにしてください。口頭のみだと、絶対忘れられてしまいますから)、理解してもらうことが重要だと思います。

 ちなみに、今までなら本部(融資部や審査部)を説得するための資料も支店の貸付係が作ってくれていましたが(私はそれこそ山のように作ってきました)、これまでお話したとおり、貸付係にその時間的余裕も物理的余裕もなくなってしまった為、経営者が今までと同じような姿勢なら融資を行ってもらえない可能性は大きいと思います

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