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今日も社会保険労務士の一日が終わった (3)

 「どうすることが労使にとっていいことか」
 先ほどから自宅への帰り道ずっと考えながら車を運転する。

 使い込みをした女性従業員の訴えでセクハラ疑惑を持たれた会社だが、解雇を伝えた損ねた従業員があの日以来休んで1ヶ月になったある日、労働基準監督署から会社に電話があった。

 内容は女性従業員を会社が理由無しに解雇するので会社を説得してほしいという事であった。また、翌日には労働局の均等室からセクハラにあったと女性が申告にきたので内容を聞きたいという連絡が入った。

 また、会社には、女性従業員から診断書が届いた。
 「抑うつ症により3ヶ月の加療を要する」
 慌てて電話をかけてきた管理部長は困り果てていた。

 管理部長は30歳で会社に入社してまだ1年足らず、会社の内容も殆ど分からないままに問題を解決しているようだ。その管理部長と社労士は、監督署、労働局をまわり女性労働者の言い分を聞いたが、もっともな部分と首をひねることもあった。

 女性労働者は、セクハラを受けたことを会社に言ったら解雇をほのめかされた。そしてこの問題を考えたら、怖くなって会社に行けなくなってしまった。そこで精神的な障害が起こり、労災の申請までしたいのだという。

 管理部長とすぐに対策を取る事にした。社労士は少し悲しかった。なぜ女性従業員は会社に対して対峙するのではなく、もう少し協力して問題を解決できないのか。また、女性のデリケートな部分だから女性同士の話合いの方が上手く解決するだろうと、会社に対しては当事務所で働いている社会保険労務士兼産業カウンセラーを中に入れるようにすることを伝えた。

 管理部長には、女性従業員が納得するように動くことが会社の誠意であり、混乱した原因の一部は会社にもあることを分かってもらった。これで女性従業員も分かってくれることを期待した。

 あれから1年になるが女性従業員は、休職期間を満了し退職となり健康保険の傷病手当金を受けているらしいということを管理部長から聞いた。

 予防的な人事労務を会社と共につくり、同様の事案が発生しないような企業風土をつくる必要性を強く感じる事案であった。

 自宅に帰ってのビールがほろ苦く感じた。(終)

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