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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第570号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2011年 3月14日                        第570号
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 発行部数: 20,325部(まぐまぐ 14,828部、melma! 5,497部)
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■ 目 次
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  □ 短期集中!知らなきゃ損する税金の話 第2回
    「サラリーマンに「経費」は認められない?」

  □ なっとく! 法律相談 第558回
    「ワンセグ携帯でもNHK受信料を払わなくてはだめ?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1007.php

  □ 法律クイズ 第244回 【問題】
    「天皇を訴える?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0491.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第五十八回 「共同正犯と幇助犯」

  □ 法律用語 「罹災都市法」

  □ 法律クイズ 第244回 【解答】



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 3月11日(金)に発生しました東北地方太平洋沖地震により被害に遭われ
 た皆様に心からお見舞い申し上げます。

 災害情報に関してまとめられたページがありますのでご紹介いたします
 (※当法人が運営するサイトではありません)

 Googleによる東北地方太平洋沖地震情報ページ
 http://www.google.co.jp/intl/ja/crisisresponse/japanquake2011.html



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■ 短期集中!知らなきゃ損する税金の話 第2回
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 「サラリーマンに『経費』は認められない?」

 □Q□
 
  自営業の友人は、いろいろなものを「経費」で買っているようです。サ
 ラリーマンの私からすると、うらやましい限りです。サラリーマンには、
 「経費」は認められないのでしょうか?


 □A□

  自営業の人は、事業に必要な費用を仕入原価や経費(必要経費)として
 売上から差し引いて、最終的な儲け(所得)を計算します。実際に経費と
 して認められるには、業務との関連性が必要で、関連性がないのに計上す
 れば脱税になりますし、逆に、領収書などがないために、本来計上できる
 はずの経費を計上できなければ、その分多くの税金を払わなければならな
 くなります。必ずしも良いことばかりではないのです。

  これに対して、サラリーマン(給与所得者)の場合、国があらかじめ定
 めた経費相当額を年収から差し引くことにしています。これが「給与所得
 控除」とよばれるもので、具体的な金額は以下の通りです(年収が660万
 円以下の場合には、別の表を使って算出するので、若干金額が変わります)。

 ▼給与所得者の年収       ▼給与所得控除額
 
   180万円以下          収入金額×40%
             ※65万円に満たない場合には65万円

 180万円超360万円以下     収入金額×30%+18万円

 360万円超660万円以下     収入金額×20%+54万円

 660万円超1000万円以下     収入金額×10%+120万円

   1000万円超        収入金額×5%+170万円

 
  上記に加え、仕事に関連する特定の支出については、いわば特別な経費
 として、さらに年収から差し引くことができます。これを「給与所得者の
 特定支出控除」といいます。

 具体的には
 
 1. 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出

 2. 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定
   のもの

 3. 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるた
   めの支出

 4. 職務に直接必要な資格(一定の資格を除きます。)を取得するための
   支出

 5. 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行の
   ために通常必要な支出のうち一定のもの


 これらの支出の金額が、給与所得控除額を超えた場合には、超えた分の金
 額について給与所得控除後の金額から差し引くことができ、確定申告をす
 れば、税金が還付される可能性があります。

 4.の資格には
 
 簿記や珠算・英語の検定資格・栄養士や調理師の資格・運転免許
 危険物取扱者免許
 
 などが含まれ、

 弁護士・公認会計士・税理士・医師・歯科医師・司法書士・行政書士・
 社会保険労務士

 などは含まれません。



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■ なっとく!法律相談 第558回
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 「ワンセグ携帯でもNHK受信料を払わなくてはだめ? 」

 □相談□

  NHKの受信料の問題です。テレビは家にないのでその旨を書面で提出し
 今まで済んでいたのですが、昨日、集金に来られた方が、パソコンもしく
 はワンセグ機能の携帯電話を所持していたらそれは放送法により支払が生
 じると言われました。パソコンは壊れてから所持していませんが、携帯電
 話はワンセグ機能があるので支払わなければいけないでしょうか?
  また、その携帯電話は会社からの支給品で実際の名義は私の名前ではあ
 りませんが、それは関係ありませんか?
  家に入れろととてもしつこく、怖かったのでまた、その方が来ると思う
 と不安です。教えてください。

                       (年齢不詳:性別不明)


 □回答□

  確かに、NHKの見解は、テレビを視聴できるパソコンもしくはワンセグ
 機能付きの携帯電話(以下「ワンセグ携帯」とします。)は、「協会の放
 送を受信することのできる受信設備」(放送法(以下、単に「法」としま
 す。)32条)にあたるとして、受信契約の対象となり受信料の支払いが必
 要である、というものです。
  しかし、その一方で、ワンセグ携帯は、「放送の受信を目的としない受
 信設備」(法32条但し書き)にあたるという解釈も可能です。
  そして、この点に関して判断した最高最判例は未だありません。
  すなわち、相談者において、「ワンセグ携帯は、受信契約の対象となる
 という見解は、一方当事者の主張に過ぎず、ワンセグ携帯は法32条但し書
 きにあたり受信契約の対象とはならない」と主張し、NHK側からの受信料
 の徴収を突っぱねることも可能かとは思います。
  ただし、近年NHKによる受信契約の未契約者に対する訴訟が数件提起さ
 れていることから、受信料の支払いを拒否し続けるとNHKから訴訟を起こ
 されるリスクがあることも事実ではあります。
  そこで、もっとも穏当な方法は、ワンセグ機能の付いていない携帯電話
 に替えることであると考えます。一度、勤め先にご相談なさってはいかが
 でしょうか。
  なお、携帯の名義が誰であるかは、今回のご相談の件には影響がないも
 のと思われます。なぜなら、他人名義のワンセグ携帯を使用することは、
 他人から借りたテレビを使用していても、「協会の放送を受信することの
 できる受信設備を設置した」(法32条)といえ、受信料を支払わなければ
 ならないのと同じといえるからです。
  最後に、受信料の集金の方(NHKによると「地域スタッフ」と呼ばれる
 方)が、家に上げろとしつこいということですが、もちろん相談者が地域
 スタッフを家に上げる法律上の義務はありません。仮に、相談者の意に反
 して家にあがりこんだ場合は、住居侵入罪(刑法130条前段)にあたりま
 す。そして、相談者が敷地から退去を申し出たにもかかわらず、地域ス
 タッフが退去しない場合には不退去罪(刑法130条後段)が成立します。
  地域スタッフの方があまりに非常識な行為をされるのであれば、お近く
 のNHKの営業所にご相談されてはいかがでしょうか。


  [関連情報]
  ・NHKの受信料、払わなければならない?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/143.php



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■ 法律クイズ 第244回 【問題】
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 「天皇を訴える?」

  天皇を被告として民事裁判を提起することはできるでしょうか?

 1. できる
 2. できない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 裁判員のための一口判例解説
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  第五十八回 「共同正犯と幇助犯」
        ~福岡地裁昭和59年8月30日判決~

  数人で犯罪を行う場合、それぞれの役割の重さに差が出ることがありま
 す。
  その場合、比較的軽い役割を担った者に関して、「主体的に罪を犯した
 (共同正犯、刑法60条)」と評価して正犯と同じ重い責任を問うか、それ
 とも「犯罪の手伝いをしただけ(幇助犯、同62条)」と評価して正犯より
 も軽い責任を問う(同63条)かが問題となります。
  今回の事案でも、犯罪行為の一端を担った被告人を、強盗殺人未遂罪
 (同240条、243条)の共同正犯として扱うべきか、幇助犯として扱うべき
 かが争われました。
  
  被告人Xは、知り合いのSに誘われて一緒に博多駅へ行き、PQRを紹介さ
 れました。
  この後Xは、車内での会話ではじめてPQRSの強盗殺人計画を知ることに
 なります。
  すなわち、Sと面識のある暴力団幹部Aを覚せい剤取引を口実にホテルに
 おびき出し、RがAを拳銃で殺して、Aの持参した覚せい剤はSが奪うという
 のです。
  Xは、帰りたいと言えば口封じに殺されるかもしれないと考え、黙ってS
 らの話を聞いていましたが、この車内での謀議では、Xの役割は問題にも
 されませんでした。
  また、奪った覚せい剤はSのものにすることが決まり、Xには、報酬の約
 束も実際の報酬も与えられてはいませんでした。
  
  Xは、内妻がSから危害を加えられるのではという恐れと所持金の少なさ
 から、逃走を諦めて、Rとともに、ホテルの2部屋を予約しました。
  ちなみに、この間、SはRに犯行方法の変更を指示したのですが、これも
 Xには知らされませんでした。
  
  Sに呼び出されたAとともに、予約した部屋の一室で待機していたX。
  Xは、Sの指示に従い、Aと別室にいる(と見せかけた)買い手との取り
 次ぎ役を演じました。
  Aが、買い手の覚せい剤検分を承知すると、Sは、覚せい剤を買い手に見
 せてくるようXに命じ、これを部屋から搬出させました。
  別室でSと覚せい剤をバッグに詰めたXがホテルを出た直後、Sの指示でR
 がAに拳銃を発射しましたが、殺害には至りませんでした。
  この後Xは、Sの就寝中に覚せい剤1袋をポケットに入れて逃げましたが、
 その覚せい剤も処分して、Sの追求を免れようと故郷に戻りました。
  
  福岡地裁は、共同正犯を認めるには、各行為者に「ともに犯罪を遂行す
 る」という共同実行の意思が必要だと示しました。
  そしてこの共同実行の意思を認定する際には、実行行為の分担という事
 実(一般的にはこれだけで共同実行の意思があったと推認することが多い)
 に加えて、行為者が実行行為に及んだ事情や犯罪全体から見た行為者の行
 為の意義も考慮すべきとしました。
  その結果、前記推認を覆すに足りる特段の事情があれば、たとえ行為者
 が形式上実行行為の一部を担っていても、共同実行の意思なしとして、幇
 助犯に問うのが相当だと考えたのです。
  本件の場合、Xが強盗殺人未遂の実行行為の一部を担当した事実は認め
 られるものの、Xの客観的状況、加担動機、謀議への関与度、得られる利
 益、主体的関与の程度、Xの不可欠性などの諸事情を総合的に検討した結
 果、Xには他の共犯者とともに強盗殺人を行おうとする共同実行の意思が
 ないと判断。
 Xには強盗殺人未遂罪の幇助が成立するとしました。



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■ 法律用語
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 法律用語 「罹災都市法」


  地震などの大災害で、借家がなくなってしまった。
 こんなとき、建物が滅失した以上それを借りる権利(建物賃借権)も一
 緒になくなってしまうと考えるのが素直ですが、被災したうえに住居まで
 失うのは大変な負担ですよね。
  
  こうした事態を防ぎ、建物滅失後もまた権利関係を築く助けになるのが
 罹災都市借地借家臨時処理法(罹災都市法)です。
  
 ここでは、滅失した建物の借主が
 
 (1)再建された建物に借家権を設定して欲しいと申し出れば、優先的に
    設定してもらえる(14条)。

 (2)土地所有者に借地権の設定または譲渡を申し出ると、優先的に借地
    権が得られる(2条、3条)。

 と定められており、なるべく被災前の状態に近づけるよう工夫されていま
 す。
  
  この他にも、罹災都市法の適用後5年間は、借主は建物の登記なしで第
 三者に借地権を主張できたり(10条)、借地期間の残りが10年未満であれ
 ば10年間に延長されたり(11条)と、借地権者に対する保護が図られてい
 ます。
  
  もともと、罹災都市法は空襲などの戦争被害から立ち直るためのもので
 したが、今では、震災、火災、風水害などで建物が滅失した地域(罹災地
 区)の復興に用いられています(罹災都市法25条の2)。
  近年では、阪神・淡路大震災(平成7年)や新潟県中越地震(平成16年)
 の被災地域でこの法律が適用されました。
  
  多くの場合貸主も被災者であることを考えれば、こうした措置はやや借
 主側に有利な気もします。
  しかし、住居の保障がなければ町の復興など望めないわけですから、よ
 り多くの人が安心して復興に取り組むためには必要な措置といえるでしょ
 う。



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■ 法律クイズ 第244回 【解答】
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 「天皇を訴える? 」

 □解答□

 2. できない

  この点に関して、最高裁は、「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合
 の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解す
 るのが相当である。」としています(最高裁平成元年11月20日判決)。
  天皇を被告として、損害賠償を求める裁判を起こすことはできません
 (上記判例は、原告が天皇に対し不当利得の返還を請求した事例です)。
  もっとも、この判例は天皇を被告として裁判を起こすことができないと
 しているだけで、天皇が民事責任を負わないとしているのではありません。



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