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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第606号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年 1月16日                        第606号
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 発行部数: 19,945部(まぐまぐ 14,445部、melma! 5,500部)
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■ 目 次
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  □ なっとく! 法律相談 第594回
    「個人の秘密を他人に漏らした場合の罪は?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1095.php

  □ 法律クイズ 第280回 【問題】
    「内縁の妻が夫の財布を盗んでも罪にならない?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0579.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第九十四回 「被害者の持病と因果関係」

  □ 法律用語 「家事事件手続法」

  □ 法律クイズ 第280回 【解答】



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■ なっとく!法律相談 第594回
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 「個人の秘密を他人に漏らした場合の罪は?」

 □相談□

  会社内で守秘義務を負った人が、個人情報を他人(複数)に漏えいした
 場合、その人の罪と賠償はどうなるのでしょうか。
 
                          (60代:男性)


 □回答□

  今回の相談文からは、顧客の個人情報が外部に漏えいしたのか、同じ社
 員である者の個人情報が社内で漏えいしたのかが明らかではありませんが、
 漏えいさせた者は刑事上の責任と民事上の責任を負う可能性があります。

 1.刑事上の責任

  個人情報保護法は、個人情報取扱事業者を規制の対象としています(同法
 2条3項)。
  したがって、事業者でない個人が個人情報を他人に漏らしたとしても個
 人情報保護法上罪になることはありません。
  ただし、漏えいした個人情報の取得方法によっては、窃盗罪や不正アク
 セス禁止法違反の罪などが成立する可能性があります。

  上記に加え、個人情報の漏えいによって、被害者の名誉が傷つけられた
 場合には、名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立する可能性もあります。名
 誉毀損罪の成立には「公然と」事実を摘示することが必要とされています
 が、裁判所は特定の少数の人に対してなされた場合でも、それらの者が周
 りの人にしゃべって広がっていくことを認識していた場合は、同罪が成立
 するとしています。


  2.民事上の責任

  個人の情報を他人に漏らす行為は、プライバシー権(私生活をみだりに
 公開されない権利)の侵害として不法行為にあたりますし、そのことに
 よって、社会的な名誉が傷ついた場合は、名誉毀損として不法行為にあた
 ります。
  いずれの場合も、被害者は損害賠償を請求することができますが(民法
 709条)、現在の日本で認められる賠償額は低い傾向にあります。
  なお、民事上の名誉毀損が成立する場合、謝罪広告の掲載など、名誉を
 回復するために適当な処分を求めることもできます(民法723条)。

  また、個人情報の漏えいによって、会社に損害を与えた場合は、会社か
 らも損害賠償を請求される可能性があります。不法行為が認められなくて
 も、会社との労働契約や社内規則によって守秘義務を負っていた場合には
 債務不履行(民法415条)として会社に生じた損害を賠償する責任を負うこ
 とにもなりますし、解雇などの懲戒理由にもなります。


  [関連情報]
  ・スタッフの個人情報と守秘義務
   http://www.hou-nattoku.com/consult/323.php



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■ 法律クイズ 第280回 【問題】
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 「内縁の妻が夫の財布を盗んでも罪にならない?」

  Bさんの内縁の妻であるAさんは、Bさんの不在中にBさんの財布を盗みま
 した。
  Aさんは、裁判において親族間で窃盗を犯しても刑が免除される(刑法244
 条1項)のだから、内縁とはいえ妻である自分も刑が免除されるはずだと主
 張しました。
 Aさんのこの主張は認められるでしょうか。

 1. 認められる
 2. 認められない



 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 裁判員のための一口判例解説
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  第九十四回 「被害者の持病と因果関係」
        ~最高裁昭和36年11月21日決定~

  酒癖の悪い人が周囲に絡んだり危害を加えるような光景は珍しくありま
 せんし、大抵の場合は重大事件にならずに済みます。
  しかし、その絡んだ相手に持病があったとしたらどうでしょうか。
  
  酩酊した被告人Xは、Aの小料理店でAに乱暴な振る舞いをしました。
  Aと同棲中のB(当時45歳)はXに帰宅を促しますが、Xはこれに憤慨し、
 両手でBのワイシャツの襟をつかんで首を強く絞めつけたうえ、突き飛ばし
 て、Bを店の出入口外側の道路上に仰向けに転倒させてしまいます。
  普通の相手ならば、この行為自体は必ずしも致命的なものではありませ
 んでした。
  ところが、Bは、心臓に高度の肥大と白色瘢痕化部分、心冠動脈にあきら
 かな狭窄という、大きな持病があったのです。
  ちなみに、瘢痕は正常な筋肉と違って収縮しない組織であり、この面積
 が多いと心臓の機能が低下するといわれています。
  Xの暴行にこの持病があいまって、Bは、心筋梗塞を起こして死亡しまし
 た。
  
  1審・2審は、Xに傷害致死罪(刑法205条1項)の成立を認めました。
  一方X側は、Bの心臓の病変は重篤で、日常の行動の中でいつでも死亡す
 る可能性があったと主張。今回のBの死の原因がXの暴行か自然死かを審理
 するべきとして上告しました。
  
  これに対し、最高裁は上告を棄却。
  最高裁は以前にも、骨質脆弱等の体質を持つ被害者が暴行を受けて死亡
 した事案で、被告人の暴行と被害者の死との因果関係を認定していました
 (最高裁昭和22年11月14日判決)。
  本件でも、最高裁はこの判例の考え方を踏襲し、「ある行為(Xの暴行)
 と他の事実(Bの持病)とが重なって結果(Bの死亡)が生じた」という事
 実は、この行為と結果との因果関係を認めるうえで何ら障壁にならないと
 しました。
  このことから、Xの暴行はやはりBの死亡原因といえると結論付け、これ
 以上の審理は不要としたのです。



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■ 法律用語
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 法律用語 「家事事件手続法」


  平成23年5月25日、「家事事件手続法」が公布されました。
  
 「家事事件」とは、家庭裁判所が取り扱う事件のうち、少年事件と離婚訴
 訟以外のものをいいます。
  従来、この審判対象や手続については、「家事審判法」と「家事審判規
 則」が担ってきたのですが、手続に関する規定が不足していました。
  たとえば、審判時に当事者の主張を聞くか否かも家庭裁判所の裁量で判
 断されており、多くの場合で家庭裁判所ごとに手続が異なるという事態に
 陥っていたのです。
  ついには、審判に対する抗告状(不服申立)を相手方に送らなかったこ
 とで、相手方が裁判を受けられず、不利な決定を受ける事件まで生じ(最
 高裁平成20年5月8日決定、最高裁平成21年12月1日決定)、これが家事事件
 手続法制定のきっかけとなりました。
  
  家事事件手続法は、31条までだった家事審判法から大幅に条文を増や
 し、293条までにしています。
  
  まず、基本的な事項については、これまで記載のなかった裁判所の管轄
 の問題を4条~9条で定めているほか、当事者・代理人の能力等に関する条
 件を17条~27条に規定しています。
  審判や調停、それぞれの不服申立・再審等の手続も、以前よりもずっと
 詳細に記載されることになりました(39条~288条)。
  
  この手続規定では、手続保障に関する条文も差し込まれています。
  当事者や利害関係人に審判への参加を認める「参加(41条~42条)」、
 一定の事案で当事者の主張を聞くよう定める「陳述の聴取(68条)」など
 がその例です。
  
  さらに、通話形態でも審判期日に出席したとみなす「電話会議システム
 (54条)」なども利便性を向上させる新制度として登場しています。
  これで、遠隔地にいる相手方との審判も楽にこなせるようになるはずで
 す。
  
  本法施行は「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令
 で定める日」とされており、これが施行されれば、現行の家事審判法は廃
 止されます。



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■ 法律クイズ 第280回 【解答】
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 「内縁の妻が夫の財布を盗んでも罪にならない?」

 □解答□

 2. 認められない

  確かに、刑法244条1項は「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235
 条の罪(窃盗罪)、第235条の2の罪(不動産略取罪)又はこれらの罪の未
 遂罪を犯した者は、その刑を免除する。」としています(括弧は筆者。)。
  ですが、同様のことが争われた裁判において判例は、「本条1項は、刑の
 必要的減免を定めるものであり、免除を受けるものの範囲を明確に定める
 必要があることなどからすると、同項が内縁の配偶者に適用又は類推適用
 されることはない。」としました。
  つまり判例は、親族間窃盗の刑の免除は、法律上妻であるなど親族関係
 が明確でなければならず、内縁の妻というだけでは適用されないと判断し
 たのです。
  ですので、本問でもAさんの主張(刑の免除)は認められません。



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