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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第609号

                      http://www.hou-nattoku.com/
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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年 2月 6日                        第609号
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 発行部数: 19,914部(まぐまぐ 14,421部、melma! 5,493部)
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■ 目 次
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  □ なっとく! 法律相談 第597回
    「会社役員の掛持ちはしていいの?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1101.php

  □ 法律クイズ 第283回 【問題】
    「女性限定で秘書を募集してもいい?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0585.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第九十七回 「少年補導員と『警察の職務を補助する者』」

  □ 法律用語 「財産開示」

  □ 法律クイズ 第283回 【解答】



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■ なっとく!法律相談 第597回
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 「会社役員の掛持ちはしていいの?」

 □相談□

  自社の取締役または監査役が、他の会社の取締役または監査役に就任
 (自社との兼職)する場合、事前に自社の取締役会の承認を得ておく必要
 がありますか?それとも自社の取締役会への事後的な報告で足りるもので
 しょうか?
 
                          (40代:男性)


 □回答□

  取締役は、自己または第三者のために、会社の事業の部類に属する取引
 をしようとするときは、取締役会(取締役会が無い場合は株主総会)でそ
 の取引につき重要な事実を開示し、(事前に)承認を受けなければなりま
 せん(会社法356条1項、365条1項)。これを競業避止義務といいます。

  A会社(取締役会設置会社)の取締役が同種の事業を行うB会社の取締役
 になることはこの規制対象にはなりません。ただし、その取締役がB会社
 の代表取締役としてA会社の事業の部類に属する取引を行う場合やB会社の
 支配人としてB会社を代理してそのような取引を行うことは、第三者のた
 めに競業取引を行うことになるので、A会社の取締役会の(事前の)承認
 が必要となります。

  なお、会社法上、会社の監督機関としての監査役の独立性を確保するた
 めに、取締役は自社の監査役や親会社の監査役との兼任をすることはでき
 ません(会社法335条2項)。また、独占禁止法上、競合関係にある他の会
 社の役員を兼任することも禁じられています(独占禁止法13条1項)。

  その他、会社の定款や取締役と会社との契約において他の会社の役員を
 兼任する際は、取締役会決議による承認を要するとされている場合もあり
 ます。


  [関連情報]
  ・会社退職後の「競業避止義務」は有効?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/812.php



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■ 法律クイズ 第283回 【問題】
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 「女性限定で秘書を募集してもいい?」

  男女雇用機会均等法上、女性を有利に扱うことは差し支えないことから、
 女性限定で役員秘書を募集することは可能でしょうか。

 1. 可能
 2. 可能でない


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 裁判員のための一口判例解説
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  第九十七回 「少年補導員と『警察の職務を補助する者』」
        ~最高裁平成6年3月29日決定~

  少年補導員は独自に少年を補導できますし、警察と一緒にいることも多
 いですよね。
  イメージ上は警察の補助という感じですが、実際のところどうなので
 しょう。
  
  警察署長からの委託で少年補導員を務めていたXは、警察官Y・Z、他の
 少年補導員7名と一緒に、パチンコ店内で少年補導を行っていました。
  Xは18歳の少年Aに年齢を尋ね、免許証の提示を求めましたが、Aはこれ
 に応じません。
  やがてAやその友人らと、警察官や補導員らの間でもみ合いが生じ、Xと
 YはAを懐中電灯で殴ってしまいました。
  
   裁判・検察・警察の職務従事者、またはこれらの職務を補助する者が、
  職務中に被疑者等を暴行する行為は「特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条
 1項)」という罪になります。
  また、これらの者が職権を濫用して人を逮捕したり監禁した場合は特別
 公務員職権濫用罪(同194条)にあたります。
  
  Aは、Xをこの2つの罪で告訴しましたが、不起訴処分とされたため、付
 審判請求(不起訴を不服とし、裁判所に裁判を開くよう求めるもの。刑事
 訴訟法262条)を申し立てました。
  
  その結果、1・2審とも、少年補導員は刑法195条1項の「警察の職務を補
 助する者」に該当しないとしてAの訴えを退けたため、さらにAは最高裁に
 特別抗告(下級審の判断に対する不服申立で、最高裁に判断を求めるもの。
 刑事訴訟法433条)を申し立てます。
  
  しかしながら、最高裁もAの抗告を棄却しました。
  最高裁は、刑法195条1項の規定は、司法作用の適正を保持するため、一
 定の身分をもつ者の職務中の暴行・陵虐行為を特別に処罰する「特別の処
 罰類型」であると指摘。
  この趣旨からすれば、「警察の職務を補助する者」というのは、警察の
 職務を補助する「権限を有する者」でなければならないという基準を示し
 ました。
  
  少年補導員制度はそもそも警察組織が有志者、団体等と連絡・協力して
 少年警察活動を行う目的で始めたものであり、少年補導員の任務は、非行
 少年等の早期発見・補導、少年相談、少年をめぐる有害環境の浄化、非行
 防止のための地域社会に対する啓蒙などとされています。
  少年補導員制度実施要綱でも、少年補導員に法的な職務権限は与えられ
 ていません。
  
  こうした事情を踏まえ、最高裁は、少年補導員を「警察署長から私人と
 しての協力を依頼され、私人として、その自発的意思に基づいて、警察官
 と連携しつつ少年の補導等を行うもの」と位置付けました。
  あくまで私人の範囲を超えず、警察の職務を補助する職務権限は全くな
 いと判断したのです。
  
  したがって、Xは「警察の職務を補助する者」に該当しないため、上記
 の罪に問われることもないと結論付けました。



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■ 法律用語
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 法律用語 「財産開示」


  いくら裁判で自分に金銭債権(お金を支払ってもらう権利)があると証
 明されても、債務者が「支払う能力がない」と言って支払ってくれなけれ
 ば意味がありません。
  「いや、支払えるはずだ」と反論したければ相手の財産を知る必要があ
 りますが、それを自力で調べ上げるのは大変困難です。
  こうした債権者の権利を実現するため、債権者の申立てをもとに、裁判
 所が債務者に財産の開示を命じるのが「財産開示」です(民事執行法196
 条~203条)。
  
 財産開示の申立てができるのは、次の2種類の債権者です。
  

 (1)執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者(同197条
    1項)
    強制執行可能な、裁判所の債権債務関係認定書の原本を持っている
    金銭債権者のことです。
    いったん開示された情報は開示前の状態に戻せないので、開示の基
    礎となる権利関係は確実なものである必要があります。債務名義の
    中でも、仮執行宣言付判決、支払督促など、結論が覆る余地のある
    ものは認められません。
  
 (2)債務者の財産について一般の先取特権(他の債権者に優先して自分
    の債権を弁済してもらう権利。民法303条)があることを記した証書
    を提出した債権者(同条2項)
  

  財産開示の実施が決定されると、債務者は、裁判所が定めた期限までに
 財産目録を提出し(民事執行規則183条)、裁判所での開示期日に出頭し
 ます。
  そこで宣誓のうえ自分の財産について陳述したり、裁判所や申立人の質
 問に答えなければなりません。
  債務者が明らかにするのは、開示期日に自分が持っている財産(生活必
 需品以外。動産は所在場所ごとに品目・数量・価格を示す(同規則184
 条))と、申立債権者が強制執行や担保権実行を申立てる際に必要となる
 事項です(民事執行法199条2項)。
  
  債務者が正当な理由なく出頭しなかったり、宣誓を拒否したり、陳述拒
 否や虚偽の陳述を行ったりすれば、過料が科せられます(民事執行法199条、
 206条)。
  
  この一方で、債務者のプライバシーにも配慮されています。
  一度財産開示された者には、その先原則3年間は開示を命じることがで
 きません(同197条3項)。
  また、開示期日は非公開であり、開示に関する資料の閲覧・謄写等が許
 されるのは、申立人、もしくはそれと同等の資格を有する債権者、債務者
 等だけです。
  債務者本人以外がこうした情報を目的外で利用・提供することも禁じら
 れています(同201条、202条)。



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■ 法律クイズ 第283回 【解答】
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 「女性限定で秘書を募集してもいい?」

 □解答□

 2. 可能でない

  確かに、労働者の募集において女性を差別的に扱うことは許されておら
 ず、逆に女性優遇措置を採ることは認められています。
  しかし、男女雇用機会均等法上の優遇措置は「男女の均等な機会及び待
 遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として」行われる
 場合に認められるもので(同法9条)、従来女性の進出が妨げられていた
 職種への優先採用のようなケースに当てはまります。役員秘書は、従来か
 ら女性により担われてきた職種ですので、これには該当しません。



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