サイト内検索:

「知らなきゃ損する!面白法律講座」第807号

                      http://www.hou-nattoku.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2016年09月12日                        第807号
───────────────────────────────────
 発行部数: 18,684部(まぐまぐ 13,344部、melma! 5,340部)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 目 次
───────────────────────────────────

  □ ある弁護士の獄中体験記 第64回
   「宮崎刑務所生活(その2)」

  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第162回
   「移転問題で紛糾する築地市場。
    もし、是が非でも移転を食い止めたかったら?」

  □ 法律クイズ 第479回 【問題】
   「強盗なのか、恐喝なのか?」
    https://www.hou-nattoku.com/quiz/1066.php

  □ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第163回
   「ワンセグとNHK受信料」

  □ 法律クイズ 第479回 【解答】


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ ある弁護士の獄中体験記
───────────────────────────────────
 山本 至(やまもと いたる)
 元弁護士。昭和29年生まれ。昭和51年早稲田大学卒業。金融機関勤務後平
 成元年司法試験合格、同2年司法研修所入所(修習44期)。平成4年弁護士
 登録(東京弁護士会)。
 平成18年に証拠偽造、証人威迫容疑で逮捕。無罪を主張したにもかかわら
 ず、平成24年10月に最高裁判所で懲役1年6月の実刑判決が確定。宮崎刑務
 所、大分刑務所で服役し、平成26年4月出所。現在は自身の体験談などの執
 筆活動中。
----------------------------------------------------------------------

 第64回「宮崎刑務所生活(その2)」

  前回に引き続き分類調査のことを書くと、暴力団との関係の聞き取りに
 続いて、事件内容の聞き取りとなった。これもかなりの長時間となった。
  判決文の写しが手元にあるらしく、これを見ながら刑務官(技官?)が言う。
 「普通我々は最後の情状あたりから読むのです。それだけで事件の内容も
 大体分かりますし、どういう処遇をすればいいかも判断できるのですが、
 あなたの判決は読んでも分からない。何でこんな事件を起こしたんですか?
 動機が書かれていないから教えてください」と。
  そのとおり、動機など何もないから判決文には書いていない、いや書け
 ないのですと返事をして、そもそも私はやっていないのだ、だから私にも
 説明をすることはできないと返答をした。
  彼も、暴力団側にも動機はないし、あなたにも動機がない、まったく不
 思議な事件だと言っていたが、そのとおりなのである。

  事件を否認する私と刑務官との間で「今でもその主張は変わらないので
 すか」「はい」という受け答えがあり、「反省はしていないのですか」と
 の質問になった。
  やっていない者に反省というのはかなりの愚問だとは思うが、その質問
 は予測していたことであり、事前に考えていたとおり「事件についての反
 省はありません。しかし、暴力団とは節度をもって付き合うべきで、その
 点で反省するところはあります」というようなことを答えた(内心では、節
 度もあったんだけどなと思いつつも)。
  刑務官は「そうですね。反省がまったくないというのは具合が悪いから、
 その答えを強調して書いておきます」と納得してくれた。私の記憶では、
 この調査は2日間に及んだ。

  入所しての翌日、刑務官による調査の合間をぬって、入浴となった。以
 前からの知り合いの刑務官が(拘置所担当から刑務所担当となったのか?)、
 「ついでにガリやろう。それから入浴がいい」と言う。何?白衣を着た受刑
 者がバリカン片手に登場した。
  すっかり忘れていた。丸坊主だ。「ガリ」はバリカンでガリガリするか
 らなのだろうか。丸坊主になると、いよいよ自分も受刑者だという事実を
 強く実感して情けなくなる。

  刑務官の調査が終わって、知能検査やら何かの適正検査、学力検査があ
 った。心理テストなのか、一定の言葉から連想される言葉を書きそこから
 また連想する言葉を書いていくというものもあった。
  0から1までの数字がランダムに横に羅列されていて制限時間内に隣同士
 の数字を足し算した結果を書いていくというのもある。頑張ってしまった。
 また、ランダムに散らばっている数字を、1から順に鉛筆でつなげていくと
 いうものもあった。
  学力テストは漢字の読み書きと掛け算割り算に分数の問題であったが、
 小学校程度の問題である。おそらく満点だったと思う。こんなところで自
 慢しても仕方がないし、自慢するようなことでもないが。

  入所した月曜日と火曜日、水曜日の午前中はそれらの検査や調査で終わ
 り、水曜日の午後と木曜日は初めての刑務作業となった。たまたま次の金
 曜日は矯正指導日ということでラジオ放送を聞いて感想文を書くという日
 で作業はない。

  ついでに、矯正指導日について触れておく。
  毎月第二・第四金曜日がそれである。最初の拘置所生活のときにはなか
 った制度で、二度目の拘置所生活のときにできていた。私のうがった考え
 だと、公務員の労働時間も時代の流れで短縮されたがために、矯正指導日
 というものを作って、刑務作業をなくし人員を減らした(その日に稼働する
 刑務官の減少)のだろう。拘置所では不評である。
  そもそも拘置所は未決だから「矯正」という概念がまだ妥当しない。未
 決にとっては単なる休日にすぎず、毎日が休日みたいなものだからそれが
 増えたところで何のうれしさもなく、逆に休日ということで運動時間がな
 くなるからだ。

  宮崎では、初めてで最後の矯正指導日であったが、何かのラジオ放送を
 聞いて、矯正指導日ノートに感想文を書く。
  どうせ間もなくここを出るのだからだと、適当に書いたことだけは覚え
 ているが、ラジオ放送の内容はほとんど覚えておらず、うっすらと篤志家
 の落語家が何か話をしていたな、という程度の記憶しかない。(つづく)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第162回
───────────────────────────────────

 「移転問題で紛糾する築地市場。
  もし、是が非でも移転を食い止めたかったら?」

  小池知事へと変わり、一旦、豊洲への移転延期が決まった築地市場。報
 道を見る限りでは、仲卸しの関係者などさまざまな市場関係者の意見を聴
 取し、土壌汚染について改善されたかどうかをきちんと確認した後に移転
 をするのではないかという予測が立っています。

  しかし、ウイング車といって、荷台部分がめくれ上がるように開くトラ
 ックでの搬出入ができなかったり、築地市場では伝統的に活用されていた
 海水による市場内の清掃ができなかったり、果てはマグロを捌くためのス
 ペース確保が困難だったりと課題は山積しています。

  仮に、土壌汚染の問題が解決されたとしても、移転について反対の立場
 を維持する人は多くいるのではないかとも見られています。
  となれば、いったん延期となったものの行政側がシビレを切らして移転
 に踏み切るという公算もなくはないでしょう。
  その場合、法的手段として移転を食い止めることはできないのでしょう
 か?

  築地や豊洲を含め、卸売市場の開設および運営はさまざまな法令によっ
 て規律されています。卸売市場の整備や適正な運営について規律する卸売
 市場法、およびその具体的な内容を定めた卸売市場法施行令、卸売市場法
 施行規則などです。
  東京都としては、卸売市場の整備や運営を規律する東京都中央卸売市場
 条例などがあります。

  例えば、条例の88条などにおいて、知事が使用条件を指定したり、知事
 が市場施設の使用を誰に許可するかなどの権限をもっているなど、行政の
 トップ(行政法上は行政庁と言います)が判断する旨が定められています。

  このように法令に根拠があって、それをもとにして行われる行政の活動
 については、一定の要件を満たせば差し止め請求ということは想定できま
 す(行政事件訴訟法3条7項、37条の4各項などを参照)。

  もっとも、行政庁が豊洲移転を強行したとしても、「差止めの訴えは、
 一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある
 場合に限り、提起することができる」という厳格な要件があり、これを充
 足しないと差し止めが認められません。

  今回の移転問題で言えば、「重大な損害」が認められるかが鍵になるで
 しょう。例えば、土壌汚染がまったく解決されておらず、移転すると健康
 被害が生じることが明白であるというような主張をすることが考えられま
 す。
  しかし、報道を見ると、当初は土壌汚染の問題が懸念されたものの最近
 の検査結果では環境基準以下の数値となっているため、(仮に差し止め訴訟
 となれば)認められるかはあやしいものがあると思われます。

  差し止めが叶わず、移転せざるをえない状況となった場合は、移転の決
 定をひとつの行政処分と捉えて、「処分の取消しの訴え」を提起するとい
 うことも考えられます(行政事件訴訟法3条2項)。
  もっとも、この手法を選択する場合、「そもそも条例に基づく行政庁の
 行為が行政処分と言えるかどうか」という行政法学上の問題も生じます。
  さらに重大な課題として、かりに行政処分だとして取消しが認められた
 としても、裁判の結果が出るのは訴訟提起から何年も経過した後になりま
 す。となれば、行政処分(豊洲移転)後に移転が取り消されたとしても、
 「どこで市場を運営するのか?」という現実的問題に直面してしまうことに
 なります。

  こうした点から考えると、徹底的に議論した上で市場関係者が納得のい
 く形で(場合によっては豊洲を改築などして)移転するのが現実的な対応と
 なるのではないかと思われます。

  しかしながら、築地跡地には東京五輪に向けての施設や道路などの整備
 が控えており、時間的猶予はあまりありません。
  仲卸しを中心に、これまで行政が声を拾い上げることを怠ってきた市場
 関係者全体との合意形成が図れるか、小池知事のリーダーシップが試され
 ているといっても過言ではありません。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第479回 【問題】
───────────────────────────────────

 「強盗なのか、恐喝なのか?」

  金がなく、貧乏なXはコンビニで果物ナイフをちらつかせて、「弁当をよ
 こせ」と店員Yに迫りました。店員Yは、「場合によっては殺されかねない」
 と思い、言われるままに弁当を差し出しました。
  さて、この場合次のどちらが成立するでしょうか?

 1. 強盗罪

 2. 恐喝罪


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 今週の話題 ~法律はこう斬る! 第163回
───────────────────────────────────

 「ワンセグとNHK受信料」

  8月26日に、さいたま地裁で、ワンセグ機能付携帯の所有者が、NHKを相
 手取って起こした受信料支払義務不存在確認訴訟において、所有者の勝訴
 判決が出されました。
  NHKの受信料をめぐっては様々な裁判が起きています。同放送を見ないに
 もかかわらず受信料を支払うのはおかしいとか、契約締結が強制されるの
 はおかしいといった裁判です。中には偏向報道をしているから支払わない
 というものもあります。

  放送法64条1項は、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置
 した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」
 と定めています。
  ワンセグ訴訟で主たる争点となったのは、ワンセグ携帯の所有者が「受
 信設備を設置した者」に該当するかどうかでした。より正確にいえば、ワ
 ンセグ所有者が「受信設備」を所有していることに争いはありませんから、
 「設置した者」に該当するかどうかでした。
  つまり、「設置」という文言にワンセグ携帯電話を「携帯」することも
 含まれるかどうかです。

  同じ放送法の2条14号は、「・・・設置して使用し、又は携帯して使用す
 るための受信設備」とあります。そこで、放送法は、「設置」という概念
 と「携帯」との概念を区別し、別個のものとして扱っていること、つまり、
 放送法上、「設置」は「携帯」を含まない概念であることが分かります。
  さいたま地裁も、このことを理由として、ワンセグ携帯の所有者は受信
 契約を強制される者に該当しないとしたわけです。

  法律用語の解釈にあたっては、その文言の有する意味を探求することや、
 立法趣旨から検討することが重要ですが、同一法文でAとBという異なった
 文言が使用されている場合、AとBは異なるものと考えられますから、当然
 の結果といえるかもしれませんが、東京高裁がどのように判断するか注目
 してみたいところです。

  ところで、パソコン等でもNHKを受信することができるのですが、その場
 合にはどうなるのでしょうか?
  ノートパソコンやタブレットで四六時中「携帯」している場合にはワン
 セグ携帯と同じになり、デスクトップだと「携帯」は不可能ですから、
 「設置」としかいえないのではないだろうかという疑問があります。
  ただ、ノートパソコンでも、自宅に「設置」して使用している人も少な
 くないので、ノートパソコンだからといって「携帯」であって、「設置」
 ではないとすることも難しく、その人の使用方法によるのでしょうか?
  そうなると、統一的取扱いではなくなってしまい、かなり面倒な争いに
 なるような気がします。パソコンをめぐっても裁判が係属していますので、
 こちらの判決にも注目をしていきたいと思います。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 法律クイズ 第479回 【解答】
───────────────────────────────────

 「強盗なのか、恐喝なのか?」

 □解答□
 1. 強盗罪

  強盗罪は「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した」場合に成立し
 (刑法236条)、恐喝罪は「人を恐喝して財物を交付させた」場合に成立(刑
 法249条)するため、相手方にプレッシャーをかけて財物を交付させる点に
 おいては共通するため、実は区別の難しい罪になります。

  設問は、よくあるタイプのコンビニ強盗を想定していますが、ナイフを
 出して相手を脅す行為は、「逆らったら殺される」と思わせる強いプレッ
 シャーをかけることになり、「反抗を抑圧する程度の強い脅迫」と言える
 ため、強盗罪となります。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 法、納得!どっとこむ、モバイルサイトでも情報配信中!
───────────────────────────────────

 「法、納得!どっとこむ」でおなじみの「もし裁判員に選ばれたら?」
 や「裁判員のための刑法入門」を始め、法律相談・法律クイズを携帯サイト
 で配信中!外出先や通勤途中でも「法律」が学べます。

    ⇒ 『法律Q&A』http://homu.tv/q?m=lifrml 
    ⇒  ※携帯電話からのみご利用いただけます。  
       ※3キャリア対応(DoCoMo・au・SoftBank) 



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お知らせ
───────────────────────────────────

 3分チャレンジ☆パラリーガル実務検定4級
 webで受検できます!!
 気軽に受けてみて下さいね♪(所要時間約3分)
 https://www.paralegal-web.jp/kentei/cl_four.php
 
 あなたも「パラリーガル養成講座」を受講してみませんか?
 パラリーガルを目指す方や基礎から復習したい方、必見です!
 パラリーガルの基礎が学べる「入門科目」は、簡単な条件を満たせば、
 お得に受講できます☆
 
 簡単な条件とは??パラリーガル養成講座とは??
 https://www.paralegal-web.jp/
 
 お申込みはこちらから♪
 https://www.paralegal-web.jp/form/application/index.php
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ▽最新情報はFacebookで
 https://www.facebook.com/paralegal.japan/
 
 ▽パラ子とお友達になりませんか?(LINE@)
 https://line.me/ti/p/%40htw5853v

 ―――――――――――――――――――――――――
 ┏┓
 ┗■ 株式会社リーガルフロンティア21
 パラリーガル養成講座/パラリーガル実務検定事務局
 
 MAIL: paralegal@lifr21.com
 (営業時間:平日10:00~18:00)
 
 ―――――――――――――――――――――――――
───────────────────────────────────

 ★皆様のメルマガに対するご意見をお聞かせください。
  どんな些細なことでも結構です。
  また、取り上げて欲しい話題・ご質問などもお待ちしております。
  専用フォームで簡単に送信できます  ▼Click!!
  https://www.hou-nattoku.com/opinion/

 ★メルマガの相互紹介を募集しています。
  ご希望の方は、お問合わせフォームよりご連絡下さい。
  https://www.hou-nattoku.com/opinion/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行元:NPO法人 リーガルセキュリティ倶楽部
監 修:弁護士 浅井 健太、弁護士 中西 啓
───────────────────────────────────
法律相談の応募: https://www.hou-nattoku.com/lc/
登 録 ・ 解 除: https://www.hou-nattoku.com/about/magazine.php
バックナンバー: https://www.hou-nattoku.com/mailmag/
ご意見・ご感想: https://www.hou-nattoku.com/opinion/
───────────────────────────────────
関連サイト
リーガルフロンティア21: http://www.lifr21.com/
パラリーガルWEB:http://www.paralegal-web.jp/
法律事務所求人ナビ:http://www.lo-recruit.jp/
知って納得!離婚どっとこむ:http://www.nattoku-rikon.com/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        

 

ページトップへ