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現場第一主義 (1)

 こんにちは。New Profit Consultingの東川です。

 今回は私が"資金調達支援アドバイザー"という仕事を通して経験したことなどを、お話しさせていただきます。

 さて、今日は貸し剥がしに遭った女性社長さんの登場です。

 大手自動車メーカーの下請工場を大々的に経営するXさん、そうですね、年の頃なら60代くらいかな。女性で、バリバリお仕事なさる方。

 某金融機関に全額返済を迫られたXさんは、なんとか資金をかき集め、本当に全額返済してしまいました。でもよくよくお話を聞けば、「そこまでしなくても...」というケースだったのです。

 Xさんはバブル期、工場のある土地と建物を担保に、3つの銀行から融資を受けました。

  • 第1設定 A銀行 2,000万円
  • 第2設定 B銀行 5,000万円
  • 第3設定 C銀行 6,000万円

 当時の評価額は1億5,000万円とのことですから、総額1億3,000万円の融資は、まあ妥当といって良いでしょう。でもバブル後の現在、土地と建物の評価額は現在3,000万円。景気も下火で、受注も減った。残念ですが、ここまではよくある話です。

 ところが何年目かの見直し時、A・B銀行とは問題なかったのに、C銀行が怒った:

 「次回からは減額前の返済額に戻してください。そうでなきゃ全額返済ですね」。

 はい、これが貸し剥がしです。まるでお手本のような貸し剥がしです。

 さらにC銀行、こんな言葉を付け足した:

 「でないと、おたく、エライ目に遭うことになりますよ」。

 Xさん、ビビッた。「エライ目って何?」と。

 おそらくC銀行の融資担当者は、「エライ目に遭う」という言葉しか使っていないのでしょう。「あなたの会社は倒産の憂き目に遭い、先祖代々の土地・建物は競売にかけられ、ついには一家離散...」なんて具体的なことは、何一つ言っていないはず。

 でもXさんは倒産だけはさせまいと(従業員かかえてますしね)、業者への支払いを1ヶ月延ばし、さらに個人の保険を解約して、残金を一括で返済しました。

 ホントに怖かったんだそうです。その融資担当者の言葉、声色、そして態度。Xさん、怯えていました。

 さて。

 このメルマガ(編集部注:「"資金調達支援アドバイザー"という仕事」)を読んでいらっしゃる方の中に、金融機関にお勤めの方もいらっしゃるでしょう。以上の話の中で、「なんかおかしい」という点、お気づきですよね。

 はい、その通り。

 「第3設定のC銀行が、担保を競売なんかにかけるワケがない」。

 競売にかけたって、現在の土地・建物は3,000万円の価値しかないんです。しかもその3,000万円は、第1設定のA銀行、第2設定のB銀行から順番に回るので、第3設定のC銀行なんて、たった1円さえ回収できない。

 それだったら、月々1万円でもいい、減額に減額をしてでも返済し続けてくれる方が、倒産させて競売にかけるより、C銀行にはずっと大きなメリットなんですね。

 ...ということは?XさんがC銀行の融資担当者から受けた言葉の意味は?

結論 「債権回収のために、融資担当者は"脅し"戦略をとる、こともある」

 "脅し"なんて、ちょっと言い過ぎかな。でもXさんが融資担当者の言葉にひどく怯えたのは本当です。

 また、上記で私は「...こともある」と書きましたが、これは控えめな表現(笑)。現場では、たいへんよく見られる手法です。

 というのは、金融機関の立場から言えば、それが実に有効な戦略だから。今回のケースがいい例ですね。強気に出ることでXさんは勝手に震え上がってしまい、C銀行は第3設定であるにもかかわらず、第1・2設定のA・B銀行を差し置いて債権を全額回収できた。

 私が残念でならないのは、Xさんの貸し剥がし事件が、私と出会うほんの少し前だったということ。もしそのとき私がいたら、XさんとC銀行まで同行し、「"エライ目"なんてありえない」と担当者に前言撤回させ、その上さらなる減額交渉までできたのに。

 もしあなたがいつか貸し剥がしに遭うようなことがあったら、たとえ私でなくてもいい、あなたの周りの金融コンサルタントか、または金融機関にお勤めの方に一言相談してください。金融コンサルタントはもちろん、金融機関にお勤めの方もほぼ100%、今回のような貸し剥がしはありえないとすぐにわかります。

 さらに、あきらかに妥当な措置であっても、交渉の余地はあるはず。どうか怖がらず、あきらめず、そして粘り強く、事業を続けていける道を探ってください。忘れてはならないのは:

 「どれだけ減額しようが、事業を存続させて返済を続けてもらう方が、金融機関にはメリット」

という一点です

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