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借りた金? (2)

 前回(117号)から、だいぶ間があきましたので、簡単に前回の状況を説明します。

 相談者のAさんは、明日どうしても返さなければならない借金があると言って血相を変えていました。そこで、私がAさんに詳しい説明を求めたところ、借りている先をどうしても言わないので、これは借りた金ではないだろうと私が感じたという話でした。

 結局、Aさんをようやく白状させたところ、

  1. Aさんは預かっているマンションの管理組合のお金を使い込んでしまった。
  2. 明日、会計監査があるので、何としても明日までに返さなければならない。
  3. 返さなければ犯罪となり、捕まって刑務所に行かなければならないので、何とか助けてほしい。

 さて、3. には実は大きな誤解があります。Aさんは、返さなければ犯罪となるが、何とか明日までにお金を返せば犯罪とならないと考えているようです。これが大きな誤解なのです。

 「自己の占有する他人の物を横領(刑法252条1項)」すると、横領罪にあたります。この横領という行為は、判例によりますと、他人の物の占有者が委託の趣旨にそむいて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできない処分をする意思が外部に現れることとされています。

 したがって、預かっているマンションの管理組合のお金を無断で使ってしまうことはこの横領にあたります。そして、使ってしまった時点で横領罪は既遂となりますので、後でそのお金を返したとしても既に犯罪は成立しています。即ち、Aさんが明日までにお金を返したからといって犯罪にならないわけではありません。

 もちろん、Aさんの行為が横領罪に該当するからといって、直ちに刑務所へ行く(実刑になる)とは限りません。よほど悪質でない限り、初犯でいきなり実刑になることは少ないことを説明してAさんを落ち着かせ、重要なことは事情を管理組合の人に正直に話し、謝罪することであると諭しました。

 私「ところで、その使い込んだ金額はいくらですか?」
 A「約100万円。」
 私「何に使ったの?」
 この後、Aさんの答えに驚いてしまったのですが、それは次回に。

 

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