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ある司法書士の一日(3)

 「使い走り」のことを、省略して「ぱしり」というそうである。「ぱしり」と呼ばれる者は、人から鼻であしらわれているようである。

 ところで、ある日の午前10時ころ、大阪府下の○○銀行から突然電話がかかってきた。ある司法書士ことただの司法書士が全く過去に接触したことがない○○銀行の支店であった。
 電話の主である○○氏は「現在先生が引き受けている○○さんの相続登記の申請はいつされるのか。」と訊いてきたので、「来週中です。」と答えると、その主は当然のごとく「もっと早く申請できないのか。」と居丈高な物言い。さらに続けて、「相続登記の申請書を今日中に当行までファクスしてください。」と、ただの司法書士に指示するのである。

 ただの司法書士は、この電話に怒りを覚える前に、情けなくなった。司法書士は、銀行の走狗でも、銀行の御用聞きでも、銀行のひもでもない。そして銀行の「ぱしり」でもない。
 いまだに銀行の行員は、司法書士をこのような「ぱしり」程度にしか見ていないのだろうか。この銀行の支店は、このような「ぱしり司法書士」と深くお付き合いをされているのだろう。

 ただの司法書士は、○○さんの事情を鑑み、やむを得ずその日に相続登記の申請書をファクスしたが、この費用は当然○○銀行の支店が負担すべきであったので、その日に同支店に郵送した。
 翌日予想どおり、同行の○○氏から電話があり、「この請求書は何ですか。」と訊くので、ただの司法書士は「申請書のファクスについては、当然銀行負担です。」ときっぱり答えると、同氏は「相続登記の費用に上乗せしてください。」と当然のごとくまたもや指示してきた。これに対しただの司法書士は「ボランティアでしているわけではないので、貴行が支払ってください。」と言い放つと、一方的に電話は切れてしまった。

 「ぱしり司法書士」であれば、銀行の言われるままのことしかしないのであろうが、ただの司法書士は、基本的に「納得できない。」ことについては、相手が銀行であろうとなかろうと言うべきことは言う、姿勢なのであるから、同行の○○氏にしてみれば大変不幸であったのかもしれない。

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