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日本の弁護士制度 その2

1.

前回の「皆で考えよう!法の建前と現実」では「弁護士人口」について皆様の意見をうかがいました。今回の特集も前回と同様、弁護士特集です。
2回目は「弁護士への満足度」です。弁護士と接触した経験のある方、そのような経験がない方でも弁護士について普段から感じていることがありましたらご意見をきかせて下さい。

2.

  1. 弁護士の仕事としてもっとも一般的な訴訟事件の流れは次のようになります。
    1. 依頼者が法律事務所へ連絡。その後訪問。
    2. 弁護士への法律相談
    3. 相手方との話合いもしくは調停、訴訟かの方針の選択。委任状の作成。
    4. 内容証明等による交渉
    5. 調停の申立もしくは訴の提起
      ↓<裁判手続>
    6. 判決
    7. 強制執行
    8. 報酬の支払。預り金の精算。
    このそれぞれの過程で依頼者は弁護士と接触し、その対応についていろいろな感想をもちます。
  2. 日弁連は、弁護士職務基本規程を設け、弁護士の職務の適正をはかるとともに倫理研修規定に基づき、倫理研修を絶えず行っています。同時に弁護士の対応等に苦情がある場合、依頼者や事件の相手方は弁護士会に対して苦情などを申し立てることができる「市民窓口」を設け、市民からの苦情に対応しています。

その実態について見てみましょう。
下の表は2005年に申し立てられた苦情の種類と件数です。

苦情の種類終結結果への不満処理の仕方処理の遅滞対応・態度等報酬
件数4822,2621,1702,443830
苦情の種類預かり金処理その他合計苦情の対象弁護士数全弁護士数
件数1518748,2126,29522,059

 (日弁連「弁護士白書」2006年版より)

注(1)弁護士数は、2005年12月31日現在の正会員です。
 (2)一人の弁護士に複数の苦情が申し立てられている場合があります。

1番多いのが(1)対応・態度等への不満であり、その次が(2)処理の仕方、(3)処理の遅延、と続きます。1~3を通して多いのが紛争の相手方よりも依頼者からの苦情です。
この依頼者との間で紛議(紛争)が生じた場合、裁判所その他の外部の機関にその解決を求めるのとは別に、弁護士会が自主的に紛議の当事者双方の主張を聴いたうえ、実情に即した円満な解決を図るため公平妥当な調停を行うのが紛議調停制度です。最近は、平均して、全国で一年間に約500件の新件の申し立てがあります。

その他、日弁連は(懲戒の事由があると思う者からの申立てにより)自治組織として、所属している弁護士会員に対して懲戒処分をなすことができます。下の表は最近10年間の懲戒請求件数をまとめたものです。このうち、近年の懲戒処分率は平均すると請求件数の6%前後となっています。

グラフ

弁護士数が増えれば、苦情の申立てや懲戒請求の件数が増えていくのも仕方がないことかも知れません。上に挙げた苦情の申し立てや懲戒請求の件数について、皆様はどう思われますか。

世には「医療過誤」というものがあり、医者が訴えられることがよくあります。弁護士のサービスは目に見えず、素人にはわかりにくいものだけに、実際には「弁護過誤」というものも相当あるのかも知れません。しかし、日本にはそれを救済する適切な第三者機関がありません。アメリカではすでに、「医療過誤」を専門とする弁護士と同様に、「弁護過誤」を専門とする弁護士も登場しているようです。

3.

ある依頼者が満足した弁護士の対応

  1. 私が法律事務所に電話をかけ、訪問の日を決める等の対応は非常に丁寧でした。このときの対応の仕方でその事務所の第1印象が決まると思います。特に、電話は相手の顔が見えないだけに、親切・丁寧にしてくれると嬉しいです。
    直接、事務所を訪問した際の応待・案内も好印象でした。この点では、最前線で依頼者に接するスタッフの教育がきちんとなされていると感じました。
  2. 訪問した際も、弁護士は待たさずにすぐ対応し、私の話をよく聞いてくれました。弁護士は横柄な態度ではなく、親切に丁寧に私がわかるように説明してくれました。
  3. 弁護士は、最初から和解などを勧めることはなく、可能性のある解決法を複数示して、それぞれの方法の利害得失をわかりやすく説明した上で、どの方法をとるかは私が選択権をもつと言ってくれました。
    特定の解決法を選んだとき、予想される範囲で解決までかかるおよその時間についても説明してくれました。
  4. 費用については事務所独自の報酬規程が定まっており、着手金、報酬、実費の違いから、その計算根拠を示してくれました。いつ、いくら支払う必要があるのか、その支払時期もはっきり説明し、私に同意を求めてきました。その金額は納得のいくものでした。
    また、お願いしましたら「見積り書」も出してくれました。
  5. まず、相手方にこちらの要求を伝える為に内容証明を出すことになりましたが、これもすぐ書いてくれ、出す前にこれでよいかどうか書いた書面のドラフトを示し、同意を求めてきました。
  6. 話し合いがつかず、いよいよ訴訟となったのですが、訴状や準備書面、答弁書、証拠のコピーなどすべてその都度私に送り、法廷における経過を速やかに報告してくれました。これは、ビジネスの世界での「ホウレンソウ」とまったく同じだと思いました。
  7. 勝訴判決が出たにもかかわらず、相手方は任意に履行してくれませんでしたが、弁護士は速やかに執行の手続を取ってくれ、ほぼ満足のいく結果になりました。判決までの期間も思ったより短いものでした。
  8. 成功報酬を払うことになったのですが、まとまったお金をすぐには準備できなかった為、分割払いにしてくれました。できればクレジットカードで支払えるようにすれば法律事務所も一括支払を受けることができるので、さらに便利になるのに、と思いました。
    その際、預り金についても明細の説明がなされ、精算されました。
  9. 事件に関する書類はこちらから要求しなくてもすべて返してくれました。
  10. 後日、その法律事務所からアンケート用紙が送られてきて、応待の仕方や事件処理の仕方、かかった時間や費用などについて意見を求めてきました。この法律事務所は、依頼者の声を定期的に集計し、日常の業務にフィードバックしているのだそうです。

4.

ところで、2000年からすでに実行されている弁護士改革は次の4つを大きな柱としています。

  1. 広告の解禁(2000年)
    正当な広告による集客であるなら認められるべきだという考えからですが、同時に、広告を通じて弁護士に関する情報を国民に公開しようという目的もあります。
  2. 報酬規程の廃止(2003年)
    従来、弁護士報酬は日本弁護士連合会で細かく決められていました。しかし、このようなサービスの値段を同業者間で決めることは独占禁止法上、問題があるということで廃止され、報酬は各事務所が自由に決めることができるようになりました。
  3. 法人化の肯定(2003年)
    これまで法律事務所は個人事務所であり、法人格を備えることができませんでした。しかし、これでは対外的にも不便であり、顧客へのサービス体制でも問題があるということで法人格を認め、弁護士法人となる道が開かれました。この副次的な効果として「支店」の設置が可能となりました。
  4. もっとも大きな改革が、法科大学院の設置(2004年)と新司法試験の実施(2006年)です。この目的は、法律家(そのほとんどが弁護士)の量を増やし、質を高め国民へのリーガルサービスを全国くまなく提供しようという点にあります。

この一連の改革は、今まで「競争」という概念のなかった(それは弁護士の人口が余りにも少なかったから!)弁護士業界に競争原理を持ち込み「できるだけリーズナブルな料金で、質の良いリーガルサービスを、迅速に提供する」競争を促すことがその目的です。
この改革が成功するかどうかは、増加しつつある弁護士が顧客である国民や企業の支持を得ることができるかどうかにかかっています。

 さて、「弁護士の仕事への満足度」について、皆さまはどう思われますか。アンケートにお答えいただいた上で、ご意見も積極的におきかせ下さい。

弁護士の仕事について
  1. 大変満足している
  2. 満足している
  3. 普通
  4. 不満である
  5. 大変不満である

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