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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第564号

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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2011年 1月31日                        第564号
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 発行部数: 20,444部(まぐまぐ 14,951部、melma! 5,493部)
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■ 目 次
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  □ なっとく! 法律相談 第552回
    「インフルエンザの予防接種を会社で強制できる?」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/995.php

  □ 法律クイズ 第238回 【問題】
    「総理大臣が死んだらどうなる?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0479.php

  □ 裁判員のための一口判例解説
    第五十二回 「共犯からの離脱」

  □ 法律用語 「犬の臭気選別」

  □ 法律クイズ 第238回 【解答】



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 ★「市民と弁護士つながるネット」★
 
  市民と弁護士つながるネットは、一般市民の方々に弁護士の現状を正し
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 投稿されたテーマへのコメントや、これ以外にも弁護士に関する疑問・
 質問など、お気軽に投稿してみて下さい。

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■ なっとく!法律相談 第552回
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 「インフルエンザの予防接種を会社で強制できる? 」

 □相談□

  会社で、インフルエンザの予防接種を全員必ずするようにと強制されま
 した。去年までは希望者だけでした。会社で強制的にするのはおかしくな
 いですか?私は注射をすると顔色が悪くなって貧血をおこしてしまうので、
 注射はしたくないので困っています。食品関係の職場では必ずしなければ
 ならないのでしょうか?
  会社の人は「もしインフルエンザになったら営業停止になるから絶対に
 全員受けるように!受けていない人は名前を貼り出します。」というので
 すが、予防接種をしてもインフルエンザにはかかるようですし、去年は実
 際に職場の人が10人以上インフルエンザになりましたが、営業停止にはな
 りませんでした。希望者が受けることであって、強制的に全員受けるとい
 う決まりを作るのはおかしくないでしょうか。もし予防接種でアレルギー
 反応を起こした場合、どういった責任を会社はとってくれるのでしょうか?

                         (30代:女性)


 □回答□

  会社が強制することはできないでしょう。

  会社は、従業員を雇入れる時と、その後1年以内ごとに1回、定期的に一
 般の健康診断を実施しなければならないとされています(労働安全衛生法
 66条、同規則43条など)。
  しかし、インフルエンザの予防接種は、健康診断には含まれないので、
 会社が必ず実施しなければならないものではありません。
  法律で定められたインフルエンザの予防接種の対象者は、(1)65歳以
 上の者と、(2)60歳以上65歳未満の者で、心臓、じん臓もしくは呼吸器
 の機能に重い病気のある方などに限られています(予防接種法3条1項、同
 施行令1条の2)。対象者であっても、予防接種を受ける義務まではなく、
 本人が接種を希望する場合にのみ予防接種を行います。

  そのため、会社が強制的にインフルエンザの予防接種を義務付けること
 は許されないでしょう。あなたは、自らのアレルギー体質や体調を理由に、
 予防接種を拒否することができます。個人で会社に求めるのが難しい場合
 は、労働組合など団体で会社と交渉すると良いでしょう。それでも認めら
 れない場合は、全国にある労働基準監督署に相談しましょう。

  また、会社は「もしインフルエンザになったら営業停止になる」と言っ
 ているようですが、ノロウイルスなどの食中毒が発生した場合はともかく、
 従業員が季節性のインフルエンザに罹患したからといって営業停止になる
 ようなことはないと考えられます。


  [関連情報]
  ・インフルエンザなのに出社を要請されたら?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/108.php



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■ 法律クイズ 第238回 【問題】
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 「総理大臣が死んだらどうなる?」

  Aさんは、日本の内閣総理大臣です。このAさんが急な病気で死亡してし
 まった場合、日本国憲法によると、内閣は総辞職しなければならない。○
 か×か?

 1. ○
 2. ×


 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 裁判員のための一口判例解説
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  第五十二回 「共犯からの離脱」
        ~最高裁平成6年12月6日第3小法廷判決~

  複数人が共同して実力行使し、たちの悪い酔っ払いの絡みを跳ね除ける
 のはよくある話です。
  刑法は36条1項で、差し迫った不正の侵害に対する防衛行為は罰しない
 としていますが、仲間の一部がこれに止まらず、余計に手を出してしまう
 こともあります。
  こうした場合に、やり過ぎていない他の者も、共同して罪を犯した共同
 正犯(同60条)として余計な暴行の結果まで責任を負うべきなのでしょう
 か。
  
  被告人Xは、深夜、友人A、B、C、D(Dは女性)と歩道上で雑談をしてい
 ました。
  そこへ酩酊して通りかかったGと口論になったのですが、GはDの髪の毛
 を掴み、引き回すなど乱暴を始めました。
  Xら4名はGを殴る蹴るなどしてこれを止めようとしましたが、GはDの髪
 を掴んだまま、これに応戦しつつ道路を渡り、駐車場入り口付近までDを
 引っ張っていきます。
  Xらはその後を追いかけ、Dから手を離させるためにGを殴る蹴るし、つ
 いにGはDの髪から手を放しました。
  しかしGは、Xらに「馬鹿野郎」などと悪態をついてまだ応戦する気勢を
 示しており、これに苛立ったB、AがGに各々殴りかかろうとしたため、ど
 ちらもCが制止しました。  
  ところがその直後、AがGの顔面を手拳で殴打し、転倒したGはコンクリー
 ト床に頭部を打ち付けて加療7か月を要する傷害を負ったのです。
  その際、Xは、自ら暴行することも、Aの暴行を制止することもありませ
 んでした。
  
  Xは、A・Bと共謀の上Gに傷害を負わせたとして起訴されました。
  第1審、第2審ともに、「Xらの行為は意思連絡の下に行われた一連一体
 のもの」としてその全体について共同正犯を成立させ、過剰防衛にあたる
 と判断しました。
  これに対し弁護人は、捜査官の取調べに違法があったなどとして、憲法
 31条等を理由に上告しました。
  
  最高裁は、弁護人の上告趣意が上告理由(刑事訴訟法405条)に当たら
 ないとしながらも、職権で次のように述べて、原判決を破棄し、Xに無罪
 を言い渡しました。
  
  まず、一連の暴行を(1)相手方の侵害から防衛するため、複数人が共
 同して行った暴行 と、(2)相手方からの侵害終了後も、一部の者が行っ
 た暴行とに分け、その上で、(2)の暴行に加担しなかった者(本件では
 X)の正当防衛の成否を考えるべきとしました。
  ここでは、(1)の暴行が正当防衛である場合には、(1)と(2)の意
 思は断絶したものと見ます。すなわち、(2)の意思を検討するにあたっ
 ては、「(2)で(1)の意思から離脱したか」というよりは、「(2)で
 新たに共謀が成立したか」を考えるわけです。
  (2)で新たな共謀が成立したと認められれば、初めて、(1)と(2)
 を全体として考察します。
  
  本件では、(1)が「GがDの髪を離すに至るまでの暴行(反撃行為)」、
 (2)が「その後の暴行(追撃行為)」です。
  これをXに関して見てみると、(1)に関してはGの不正な侵害に対する
 正当防衛が成立しますし、(2)については新たに暴行の共謀が成立した
 わけではありませんから、(1)と(2)とを一連一体のものとして総合評
 価する余地はないと評価され、結果としてXは無罪とされたのです。



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■ 法律用語
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 法律用語 「犬の臭気選別」


  警察犬の訓練で、指導手が犬にあるものの臭いを嗅がせ、それと同じ臭
 いの布をいくつかの布の中から取って来させているのを見たことがありま
 せんか?
  これは臭気選別と言って、犯行現場の遺留品と犯人の結びつきを立証す
 るために行う、警察犬のお馴染みの仕事です。
  
  この臭気選別結果は、裁判でどのように扱われるのでしょうか。
  
  裁判で扱われる証拠は、まず「証拠能力(その証拠が証拠として裁判で
 取り調べられるだけの適格性を備えているかどうか。関連性)」を問われ、
 それが認められると次に「証明力(その証拠が裁判官の心証形成に与える
 効果。信憑性)」を判断されることとなります。
  
  従来の下級審判例は、犬の臭気選別に対して、証拠能力を否定したり肯
 定したりとさまざまでした。
  証拠能力を肯定しても、さらに証明力の段階で効力を疑問視するもの・
 肯定するものと見解が分かれており、一致した判断基準は示されていなかっ
 たのです。
  
  しかし、最高裁昭和62年3月3日決定により、この証拠能力の判断基準に
 ついては一応の決着をみることとなりました。
  ここで示された証拠能力の判断基準は、

 (1)選別に使用された警察犬がよく訓練されていて、臭気選別能力が
    信じるに足るだけの高水準に達していることに加え、選別時の犬の
    体調等も良好で、その能力がよく保持されていること。

 (2)臭気選別の実施者が専門的な知識と経験を有する指導手であること。

 (3)臭気の採取、保管の過程や臭気選別の方法に不適切な点がないこと。
 
 
 という3条件であり、これらを満たせば証拠能力が認められるとしています。
  
  証明力については、いまだ裁判官の裁量に委ねるところが大きいようで
 す。
  
  臭気選別は昔からよく見る光景ですから、当然、裁判でも有効な証拠に
 なると思いがちですが、実は慎重に取り扱われているのですね。



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■ 法律クイズ 第238回 【解答】
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 「総理大臣が死んだらどうなる? 」

 □解答□

 1. ○

  憲法によると、内閣総理大臣が欠けたとき、つまり、内閣総理大臣が死
 亡、失踪、亡命、除名されたときなどは、内閣は、総辞職しなければなら
 ないとされています(70条)。
  そのため、本問でAさんが死亡してしまった場合、内閣は総辞職しなけ
 ればなりません。

  新たに内閣総理大臣が任命されるまでは、それまでの内閣が引き続きそ
 の職務を行います(71条)。ただ、内閣総理大臣が死亡した場合は、その
 あらかじめ指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行います
 (内閣法9条)。



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