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子供の人権をむしばむ児童ポルノ(2)

 前回に引き続き、児童ポルノ禁止法の内容について見ていきたいと思います。

 日本では、1999年に児童買春・児童ポルノ処罰法が成立し、2005年に批准した条約の内容に合わせるために、法改正を行いました。
 法改正の内容は「児童ポルノを製造し、配布し、頒布し、輸入し、輸出し若しくは販売し又はこれらの目的で保有すること」を犯罪とする、というものでした。

 児童ポルノの単純所持(他に提供するつもりのない所持)は禁止されず、写真やビデオと同程度に写実的に描かれている漫画やコンピュータグラフィックスについては規制の対象となりませんでした。
 何を児童ポルノとして特定するのかの範囲があいまいで、表現の規制や行き過ぎた捜査につながるという懸念があり、単純所持の禁止については見送られたという経緯があります。

 世界的にみれば、児童ポルノは所持しただけで犯罪となっており、ほとんどの欧米諸国では単純所持が禁止されているという状況の中、日本に対する国際的な批難は高まりました。また国内からも規制すべきという声が大きくなっていました。

 それらの動きに押されるように、2014年の改正において単純所持についても禁止されることになりました。漫画やコンピュータグラフィックスなどについての議論はありましたが、表現の自由の侵害であるという強い反対があり、あくまでも実在する子供に限定すべきであるという理由から、今回も盛り込まれませんでした。
 しかし、漫画やコンピュータグラフィックスについても多くの国で規制の対象となっていることから、今後日本においても規制の対象となる可能性はあると思われます。

 児童ポルノ禁止法では、児童ポルノ提供の罪については、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金を、児童ポルノ公然陳列等の罪については5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又は併科、という厳しい刑罰を科しています。また、新しく追加となった、単純所持については、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金又は併科とされています(法7条)。

 もし、裸の写真を撮られてしまった、裸の画像を送信してしまった、といった実際の被害に遭ってしまった場合は、各都道府県の警察署が相談を受け付けています。警察署によってはインターネットで、匿名でも可としているところもあります。
 困ったらすぐに警察署に相談しましょう。

LINEなども注意

 児童ポルノの被害者になることだけでなく、最近は知らないうちに加害者になってしまうという場合もありますので、注意が必要です。
 2015年には、愛知県警が東京、北海道、大阪、愛知などで、15歳から60歳の男性32人を児童ポルノ禁止法違反の疑いで摘発しました。LINEのグループトークに児童ポルノが投稿され、共有していたとのことです。この中には学生もいました。

 では、LINEのグループトークに児童ポルノの画像が送信されてきたり、又は知らないうちにEmailに児童ポルノが送り付けられたりした場合は、即犯罪になってしまうのでしょうか?

 この点については、法務省は、児童ポルノを「自己の意思に基づいて所持するに至った者」であると「明らかに認められる者」でなければ処罰されませんので、知らないうちに児童ポルノを送り付けられたという場合には、基本的には処罰されない、と解説していますので、即犯罪になることはありません。
 しかし、当初は知らないうちに送り付けられた児童ポルノの画像であっても、その存在をわかった上で、自分の性的好奇心を満たす目的で、これを積極的に利用する意思に基づいて自分のパソコンのフォルダに保存しなおすなどした場合は、改めて処罰される可能性がある、としています。
 ですので、そのような画像がグループトークに共有されたり、Emailで送られてきたような場合は、決して保存をしてはいけません。

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