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「知らなきゃ損する!面白法律講座」第635号

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     □□   知らなきゃ損する!面白法律講座   □□

             週1回発行(月曜日)


2012年8月27日                        第635号
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 発行部数: 19,510部(まぐまぐ 14,048部、melma! 5,462部)
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■ 目 次
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  □ 自転車をめぐる法律問題 第14回
    「自転車による交通事故 -(2)事故の対処と法的責任-」

  □ 携帯電話をめぐる法律問題 第3回
    「なぜ解約料は違法でないとされたのか?」

  □ なっとく! 法律相談 第623回
    「以前借りていた物件に置きっぱなしの荷物を勝手に処分された!」
    http://www.hou-nattoku.com/consult/1159.php

  □ 法律クイズ 第309回 【問題】
    「通訳業を始めるのに資格や許認可は必要?」
    http://www.hou-nattoku.com/quiz/0643.php

  □ 民事判例解説 第14回
    「むちうち症の損害賠償、被害者の首が長いと減額?」

  □ 法律クイズ 第309回 【解答】


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■ 自転車をめぐる法律問題
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 第14回「自転車による交通事故 -(2)事故の対処と法的責任-」

  今回は、実際に自転車事故に遭った時の対処法と、その後の法的責任に
 ついて説明します。
  
 事故直後は気が動転してしまい、判断力が衰えがちですが、まずは下記の5
 つを忘れずに行ってください。
  
  (1)怪我人の救護
  怪我人がいる場合はその手当が優先です。
  怪我の程度が軽くとも、必ず医師の診断を受けましょう。
  
  (2)道路上の危険防止
  路肩や歩道など安全な場所に自転車等を移動させ、二次災害を防ぎます。
  
  (3)警察への連絡
  警察官に調書を作成してもらい、後日、自動車安全運転センターに「交
  通事故証明書」を発行してもらいます。
  この「交通事故証明書」は保険会社に保険金を請求する際に必要となり
  ますが、これは警察への届出がなければ発行されないので注意してくだ
  さい。
  
  (4)事故状況の確認
  相手の運転免許証などで名前、住所、連絡先等を確認し、事故の状況を
  簡単にひかえておきます。
  
  (5)損害保険会社への連絡
  すぐに事故の状況を損害保険会社や代理店に連絡します。
  
  
  自分が加害者の立場であれば、これに加え謝罪等の誠意ある対応が必要
 になります。
 自動車保険と違い、自転車保険に関しては保険会社の示談代行が行われな
 い傾向にあるため、こうした部分での意思疎通は後々の解決を促す重要な
 要素といえるでしょう。
  
  さて、自転車事故後に問題となる法的責任ですが、刑事上の責任と民事
 上の責任の2つがあります。
  
  刑法上の責任に関しては、前回紹介した判例のように、自転車運転者が
 交通ルールを破るなどして必要な注意を怠り、相手を死傷させた場合は、
 自転車運転者に重大な過失があったとして「重過失致死傷罪(刑法211条)」
 が成立します。
 このときの罰則は5年以下の懲役か禁錮、または100万円以下の罰金です。
  
  特に歩道上での事故は、いくら自転車側が歩道通行できる条件を備えて
 いたとしても、特別な事由がない限り、歩行者側は原則として過失なしと
 扱われます。
  自転車側に全面的な過失が認められてしまうので、歩道走行時には一層
 の注意をもって運転しましょう。
  
  次に民事上の責任ですが、加害者は被害者に対し、不法行為に基づく損
 害賠償責任を負います(民法709条)。
  たとえ自転車を運転していたのが未成年者であっても、この責任を免れ
 ることはできません。実際に、高校生でも5,000万円(横浜地裁平成17年11月
 25日判決)、4,043万円(東京地裁平成17年9月14日判決)といった高額の賠償
 命令が下されています。
  
  加害者が12歳以下で責任能力がない場合は、親などの監督義務者が加害
 児童の代わりに賠償責任を負うことになります(同714条)。
  また、責任能力のある未成年者が起こした事故であっても、親の監督義
 務違反等が認められる場合は、親に損害賠償を請求することができます。
  
 以上のように、自転車は気軽な乗り物ですが、ひとたび事故になると大変
 な事態が待っています。
 これまで自転車の時はあまり交通ルールに気を配ってこなかった、という
 人も、これからはルール遵守に努めてみてくださいね。



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■ 携帯電話をめぐる法律問題
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 第3回「なぜ解約料は違法でないとされたのか?」

  携帯の基本使用料を値引く一方、指定月以外の解約に対しては解約料を
 求める「解約料条項」。
 無料で解約できるのは契約2年後に1か月だけ設けられた「契約更新月」の
 みで、それ以外は9,975円の解約料がかかるのが一般的です(いわゆる「2
 年縛り」)。
  
  前回、京都の消費者団体が、消費者契約法違反を理由に、この条項の差
 し止めを求めて大手携帯会社各社を訴えたと話しました。
 他の携帯(PHS)会社も同様の条項を設けているため、これら裁判の判決は
 今後の携帯業界に大きく影響するものとして注目されていましたが、先日
 下されたNTTドコモ訴訟の判決は「請求棄却」でした。
  
 京都地裁は、どうしてこのような結論に至ったのでしょうか?
  
 前回も触れたとおり、解約料条項が違反するとされた法律は、主に
 
 I「平均的損害を超える違約金を定めてはいけない」とする消費者契約法9条
  1項

 II「消費者の利益を一方的・不当に阻害してはいけない」とする同法10条
 
 の2つです。
  
 Iを考える上でのポイントは、「平均的損害」とは何かということです。
  
  消費者団体は解約料条項を「短期間で契約解除した場合、顧客側の支払う
 9,975円が携帯会社の損失を大きく上回る」などと批判していました。
  「平均的損害」は個々の顧客の事情を考慮して導かれるべきであるとこ
 ろ、解約料条項はその視点が抜けているというのです。
  
  しかし、地裁は、「平均的損害」を導く際、このように顧客各人の事情
 を考える必要はないとしました。
 地裁によれば、「平均的損害」は、携帯会社と顧客全体が結んだ多数の契
 約に関して
  
 携帯会社が被った損害額 ⇔ 顧客の負担すべき額(携帯会社が損害賠償を
 請求できる額)
  
 を揃え、顧客の負担が不当に膨らまぬよう歯止めをかけるためのものとい
 うざっくりとした認識です。
 そのため、「携帯会社の損害」と「顧客の負担」は顧客ごとの細分化され
 た額ではなく、それぞれひとかたまりの総額・総和で考えればよいとしま
 した。
  
  そして、たとえ携帯会社の損害が「平均的損害」を上回っていても、顧
 客に対し「平均的損害」以上の額を請求することはできないのですから、
 反対に携帯会社の損害が「平均的損害」を下回っている場合も顧客側は
 「平均的損害」額の支払を甘受すべきとの見解を示しています。
  
  次に、IIで大切なのは、本当に顧客側は一方的・不当に利益を害されて
 いるのか?ということです。
 これについて地裁は、本来、顧客は標準の基本使用料金を支払うべきとこ
 ろを、2年縛りの条項によって割引を受けているので、顧客が解約料を支払
 う理由はあるとしました。
  また、解約までの2年が不当に長いかについては、中途解約をする人の平
 均経過月数が14か月である点を受け、14か月あれば解約権の制限に見合っ
 た対価、つまり9,975円以上の利益を受けたといえるため、制限期間が不当
 に長いともいえないとしています。
  さらに、2年縛りの含まれるプランについては、「ひとりでも割」など、
 プラン名に「割引」を示す「割」の文字を入れているうえ、パンフレット
 などで解約料発生の条件等についての記載を徹底するなど、解約料条項の
 説明を十分に行っていることから、携帯会社と顧客との間に一方的な情報
 量等の差は認められないとも述べています。
  
 以上の理由から、京都地裁は契約料条項を適法と認めたものと思われます。
  
 今年の5月30日にも、高松地裁で解約料の返還を求めた裁判の判決があり、
 やはり原告の請求が棄却されました。
 どちらの判決もまだ地裁段階なので何とも言えませんが、解約料条項は今
 後もしばらく続きそうです。



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■ なっとく!法律相談 第623回
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 「以前借りていた物件に置きっぱなしの荷物を勝手に処分された!」

 □相談□

  オーバーステイで、入管に収容中の婚約者がいます。彼は、店舗兼住居
 として借りていた賃貸物件で修理工場を経営していましたが、収容されて
 しまったことから家賃が支払えず家主に契約を解除されてしまいました。
 そして、今年の5月にその賃貸物件を契約した人達が、その場所に残されて
 いた彼の車十台ほどと工具類を売ってしまいました。彼らの言い分は、家
 主が売れる物は売って代金はもらってもよいと言ったからそうしたという
 ものです。警察に相談にいきましたが、民事になると言われました。弁償
 してもらえるのでしょうか?本人が入管に収容中でも、訴えることはできま
 すか?
 
                          (40代:女性)


 □回答□

  まず、相談者の婚約者は、賃借していた物件の賃貸借契約を解除された
 ことによって、当該物件を正当に使用する権限を失ってしまったことにな
 ります。そして、そのような権限が無いにも関わらず、自己の所有物を他
 人の土地や建物に置き続けることは不法占有行為になります。
  ですので、今回の場合相談者の婚約者は家主の所有物件に対して不法占
 有をしていたことになります。この場合、家主は相談者の婚約者に対して
 占有物を処分するよう求めることができます(これを物権的請求権といいま
 す)。
  しかし、所有権が侵害されているからといって、その原因となる物を勝
 手に処分することは、原則として認められません。せいぜい、相談者の婚
 約者の持ち物を保管するための費用と持ち帰りを請求できるに過ぎないと
 考えられます。
  (不法占有物の処分に関しては、「無断で駐輪した自転車、勝手に処分し
 て良い?」もご覧下さい。)
 http://www.hou-nattoku.com/consult/664.php
  
  したがって、今回家主が新たな賃借人に処分を認めた行為は(民事上)違
 法な行為だといえます。また、実際に他人(相談者の婚約者)の所有物を処
 分した新たな賃借人の行為も(民事上)違法な行為と言えるでしょう。
  ですので、相談者の婚約者としては、勝手に売られた自動車等の価格相
 当額を損害賠償請求することができます。これは、入管に収容されていた
 としても請求することが可能です。
 
 
  [関連情報]
  ・無断で駐輪した自転車、勝手に処分して良い?
   http://www.hou-nattoku.com/consult/664.php



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■ 法律クイズ 第309回 【問題】
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 「通訳業を始めるのに資格や許認可は必要?」

  Xさんは国際会議における通訳の仕事を始めようと考えました。

 Xさんのような通訳の仕事を始めるのには国家資格や許認可が必要でしょう
 か?

 1. 資格が必要
 2. 許認可が必要
 3. 資格及び許認可が必要
 4. 資格も許認可も必要ない



 ▼ 解答は、メールマガジン下部にあります。 ▼



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■ 民事判例解説
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  第14回「むちうち症の損害賠償、被害者の首が長いと減額?」
     ~最高裁平成8年10月29日~

  同じような事故に遭っても、人によって怪我の程度が違うことがありま
 す。
 その原因は運や身軽さなど色々考えられますが、場合によっては身体的特
 徴が怪我の悪化を助長することもあるようです。
  
  今回紹介する事案は、事故の被害者が重傷化しやすい身体的特徴をもっ
 ていたことを理由に、加害者の怪我に対する損害賠償を過失相殺(民法722条
 2項)しうるかというお話です。
  
  事の発端は、Y1が運転するY2の自動車が、X運転の自動車に追突した事故
 です。
  
  その際Xは頭部を運転席に強く打ち付け、翌日、頸椎捻挫と診断されまし
 た。
 さらにその後も、Xには、頭頸部外傷症候群による頸部・後頭部疼痛、矯正
 視力の低下等の症状が現れました。
  
 当事故に関して、XはY1・Y2に損害賠償請求訴訟を起こします。
  
  1審・2審ともY1・Y2の責任を認めましたが、平均的体格に比べ首が長く、
 多少の頸椎の不安定症があるというXの身体的特徴に着目。
 この身体的特徴に本件事故の損傷が加わったことで、上記の症状を発生、
 悪化または拡大させたと判断しました。
 加えて心因的要素も考慮し、過失相殺を類推適用して、損害賠償額の4割を
 減額という結論に至りました。
  
 これを不服としたXが上告。
  
 最高裁は原審判決を破棄し、差戻ししました。
  
 被害者に平均的な体格や通常の体質とは異なる身体的特徴があったとして
 も、それが疾患にあたらない場合には、特段の事情がない限り、その身体
 的特徴を損害賠償額算定時に考慮すべきでないと考えたからです。
 「首が長く、これに伴う多少の頸椎不安定症がある」というXの身体的特徴
 はもちろん疾患ではありませんし、このような身体的特徴をもつ者が、一
 般的に負傷しやすいものとして慎重な行動を求められているという事情も
 ないため、本件には特段の事情も存在しないといえます。
  
  以上より、最高裁は、Xの損害発生や損害の拡大にXの身体的特徴が寄与
 していたとしても、損害賠償額を減額する理由にはならないと結論付けた
 のです。



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■ 法律クイズ 第309回 【解答】
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 「通訳業を始めるのに資格や許認可は必要?」

 □解答□
 4. 資格も許認可も必要ない

  通訳業を営むにあたって、行政の認可を受ける必要はありません。一般
 の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続が必要なくらいで
 す。
  また、資格についても通訳協会が主催している検定試験に合格していれ
 ば、仕事の受注等において有利であるという程度です。
  もっとも、Xさんのような国際会議の通訳等ではなく、報酬を受けて外国
 人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する「通訳案内業(ガイド)」に従
 事するには、通訳案内士試験(国家試験)に合格し、都道府県知事の許可を
 受ける必要があります。



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